中国人は、元来、組織や会社にここまで自分を捧げることはなかった。地元のコネクションの中で暮らすことが多かったからである。しかし、社会的上昇を望むなら、彼は都会に出てくるしかなかった。

 すると会社が唯一の生活の支えになり、妻と子の生活も支える共同体になる。

定年35歳説のエンジニア
中国IT業の職業寿命の短さも共感を呼んだ

 さらに中国のIT業に従事する人々の、職業寿命の短さも共感を呼んだ。

「私、この人にものすごく同情するわ。公務員以外、安定した仕事なんて、ないよ。42歳で開発の現場はムリ。あれは“青春飯(若者の仕事)”で、35歳で定年だよ。42歳で修士卒、経験と技術があるなら、また大学院に行くか、小さい会社で最初からやりなおせば良かったのに。弱すぎる」

「民間企業は40歳以上は、いつでもリストラされる」

 華為は、今年、人気携帯の開発エンジニアなど一部の社員に、約1700万円のボーナスを配ったと話題になった。しかしその半面、34歳以上の社員の一部をリストラしたとも言われている(取材に答えて華為側は年齢だけが決定要因ではないと否定している)。

 中国は能力があれば、若くても高給が取れるが、一方でリストラされるのも早い。

 管理職でも一般職も、それぞれ成績下位のたとえば5%をリストラする“末席淘汰”も盛んであり、変化の激しい社会で技術革新を繰り返すIT業だと、やはり20〜30代が役に立つ。中国の今の“高速発展”は彼らの生血を吸うような、早い新陳代謝で成り立っている。

 その一方で不動産の価格がせり上げられて、夫婦で月30万円だの50万円だの、高額のローンを抱えている中国人は非常に多い。

 北京でも上海でも、郊外のごく平凡なマンションが1億円を超えるのは普通なのである。このバブルを利用し蓄財した人も多いが、結婚前後に前金をかき集めて自分たちの住居を買い、値上がりはしたものの、売るわけにもいかずローンに追われる人も少なくない。

 加えて、子どもの教育費の高騰である。個人教授料などは、しばしば日本より高い。