株価、序列、人事で明暗! 半期決算「勝ち組&負け組」【2024秋】#1Photo:AFLO

財閥系の化学大手3社の中で三井化学の業績が堅調だ。同社は近年、財務改善や構造改革を推進。足元の業績は、構造改革に着手したばかりの三菱ケミカルグループや、昨年は創業以来最大の最終赤字に沈んだ住友化学とは対照的だ。ただし、PBR(株価純資産倍率)に着目すると、3社とも「1倍割れ」と低迷している。特集『株価、序列、人事で明暗! 半期決算「勝ち組&負け組」【2024秋】』の#1では、3社の業績や財務を基に「稼ぐ力」を比較するとともに、三井化学のPBR上昇を妨げている要因について考察する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

三菱は構造改革、住友はリストラ
業績では三井化学が「勝ち組」

 化学事業の成長を加速――。化学最大手の三菱ケミカルグループが11月13日に開いた経営方針説明会で、4月に社長に就任した筑本学氏は「本業」に回帰する方針を打ち出した。

 筑本氏の前任で同社初の外国人社長だったジョンマーク・ギルソン氏は、環境負荷が高く、業績面でも課題となってきた石油化学(石化)事業の分離を模索してきた。だが、実現に向けた他社との交渉は進まなかった上、経営の混乱も招き、事実上解任された。

 筑本氏が同日に公表した2030年3月期までの5カ年の中期経営計画で示したのは、ギルソン路線を大幅に修正する「化学回帰」だ。傘下の名門製薬、田辺三菱製薬に関しても「ベストパートナーを探す」と掲げ、切り離しも示唆する。今後の成長に向けた道筋を示したものの、業界の“盟主”の構造改革はまだ緒に就いたばかりだ。

 財閥大手で前期に創業以来最大となる3000億円超の最終赤字に沈んだ住友化学は、足元で次々とリストラ策を打ち出している。巨額赤字の要因の一つとなった石化事業については、同社は8月に、サウジアラビアの国有石油会社、サウジアラムコとの合弁企業であるペトロ・ラービグの保有株式の一部をサウジアラムコに売却すると発表した。約20年にわたり手掛けてきた一大プロジェクトの見直しに大ナタを振るった格好だ。

 両社とは対照的に、財閥系大手で「勝ち組」といえるのが、三井化学だ。同社の25年3月期中間期(国際会計基準)のコア営業利益は前年同期比47.2%増の459億円、最終利益は同7.5%増の222億円だった。ライフ&ヘルスケア、モビリティ、ICTという「成長3領域」で着実に稼いだ。同中間期では三菱ケミカルが最終減益、住友化学が2期連続で最終赤字に沈んでいる。

 足元で業績の明暗が分かれた3社だが、実はPBR(株価純資産倍率)は同水準だ。9月末のPBRは三菱ケミカルと住友化学が0.7倍台で、三井化学も0.84倍と1倍を下回っているのだ(下表参照)。

 次ページでは、3社の財務を基に「稼ぐ力」などを比較するとともに、三井化学のPBRが低迷する背景を考察する。「PBR1倍割れ」から脱却するに当たってのキーポイントとは。