現在の中国は、高級店はもとより、タクシーや小さな屋台、路上の音楽家への“投げ銭”まで、あらゆる支払いがスマホ決済できる。「財布はほとんど持ち歩かない」というキャッシュレス化が進んでいる。その半面、スマホを紛失したり、壊したりすると、とんでもなく不便で恐ろしい事態となる。折しも、中国在住17年目になる筆者がスマホを水没させ、パニックに陥った顛末を紹介しよう。(作家 谷崎 光)
空港トイレにスマホ水没
焦りまくる筆者
2017年11月――。中国・北京首都空港、日本行きの国際線出発ゲートで、私の心は期待にあふれていた。今、日本では中国のスマホ決済についての報道が増えているらしい。ここは北京在住17年の私もまた書くべきであろう。
しかし、実際に利用者のスマホを見ないと、その便利さの本当の意味はわからない。
つまり、スマホから100円でもそのまま高利率のファンドに簡単に預けられるとか(外国人は不可)、あらゆるレンタル、予約、配達サービスにつながるとか…つい先ほども空港内で、日本で使うWi-Fi設備を借りたばかりだ。
これも予約しておいた業者のタブレットを、自分のスマホでピッとすればすべて終了である。デポジットの500元(約1万円)も、私のスマホの微信支付(ウイチャット・ペイ)から自動的に支払われる。
この過程に紙はもう一枚もない。受け取りの記録もスマホの中である。