さらに、一人っ子世代で、夫婦それぞれの両親の面倒を見なくてはいけない。親が都市戸籍なら、“単位”(昔の国営の勤め先)から、祖母・祖父がそれぞれ都市部の家や年金をもらい、孫に援助している場合も多いが、農民戸籍なら社会保障は医療や年金も含め、事実上ほとんどない。勤め先や戸籍によるが、医療の自己負担額も非常に高い。
夫婦のどちらかが仕事を失ったら、あるいは家族や親や親戚の誰かがちょっと病気をしたら、たちまちローンの返済が停止する綱渡りの家族もたくさん存在する。
「奥さん、なんで働かないの?旦那を金のなる木にしなくていいよ」
「お手伝いさんの費用を払っても、女性は仕事を捨てちゃダメ。いやでも続けなきゃ」
中国に共働きが多いのは、リスクヘッジもある。中国は学歴社会だ。差別は性別ではなく、戸籍と学歴であり、妻が夫と同じく大卒ならば、仕事は続けており、男性と同じように高収入なことが多い。が、そうでなければ35歳をめどにいい仕事はなくなる。
周囲には国の財産を金に換え、“濡れ手で粟”で蓄財した官僚や、生まれた時から一生使いきれない財産を持った富裕層の2代目、3代目もたくさんいる。
新興IT企業にも、自分たちの徹夜徹夜の働きを厚顔でかすめ取っていく官の天下りがいる。今の中国には、ベンチャーは潰したけど結局、エンジェルからの資金を蓄財したとか、都市戸籍というだけで何億もの家をもらい、それを利用して富豪になった人だらけである。つまり、理不尽だらけ。
中国人がよく言う言葉がある。
「世界上,〓有絶対的公平!(公平というものは、世界にはない、〓の字は口偏に那)」
そんな中で、勉強と真面目な仕事ぶりで這い上がり、家族を支えてきた彼の不幸に、“同情”、“共感”、またはその“弱さ”を指摘する声がネットにあふれた。
社内内部のトップ同士の争いで
直属の上司から退職を勧告された
しかし、ここまで頑張ってきた人が、そんなに簡単に自殺するのだろうか。
私も、ネット上に家族が拡散したといわれる、彼の死の1週間前の家族写真を見たときに、非常に疑問に思った。この時点ですでに離職の話は出ている。彼の笑顔にはその影はない。