今年はCSRの大転換期である。規模の大小を問わず、多くの企業が成長戦略としてのCSRに取り組むようになるだろう。ここ数年、筆者は慈善としてのCSR(CSR1.0)から本業を通じたCSR(CSR2.0)を経て、CSRは本業と統合されるCSR3.0へと進化すると、ことあるごとに述べてきたが、気がついてみれば社会はとっくにCSR3.0時代に突入していたのである。

社会貢献への意識は
慈善からビジネス重視へシフト

 今年、1月1日の日経MJは社会貢献特集を1面で組み、社会貢献業界では大きな話題になった。その特集タイトルは「社会貢献はビジネスへ」。専門紙とはいえ、新聞の1面でそんなことが言える時代になったかと感無量であった。というのは大げさだが、CSRをビジネスの範疇で考えることができるようになったことはやはり喜ばしい。

 同特集では全国の男女約4000名を対象として、企業の社会貢献に対する意識調査を行なっている。これによると、「企業は社会貢献をすべき」と答えている人は93.5%。注目すべきは、企業の社会貢献をビジネス視点で考える層が、慈善として捉える層を圧倒していることだ。

「社会貢献と収益を両立するビジネスモデルを構築すべきだ」が40.2%。「企業は社会貢献を通じて企業価値の向上を図るべきだ」が16.5%。合わせて56.7%。

 一方で、「利益の一部を社会貢献のために拠出すべきだ」が30.7%。「企業は採算を度外視しても社会貢献活動に取り組むべきだ」に至っては、たったの3.1%である。

 CSR業界では長らく、「CSRは企業の利益とはまったく別次元のものである」などという寝ぼけたおとぎ話が幅を利かせていたが、そんな寝言は現場のビジネスパーソンにはまったく通用していないということが証明されたわけだ。

 多くの企業では、社員がCSRに関心を持たないという悩みを抱えているが、それはCSRに関心を持たないのではなく、寝言に付き合っているヒマなどないというのが本当の理由だったのだ。

 事実、筆者が関わっている「CSR3.0」の実践企業では、休日に行なったCSRセミナーに社員の半数近くが参加したし、某大企業ではそれまで社内ボランティアの説明会をしても20名程度しか集まらなかったが、「成長戦略としてのCSRをやります」とアナウンスしたところ、就業時間後に開催した説明会に100名を超える社員が参加した。いずれも、休日手当、残業手当などつかないにもかかわらずである。

 ビジネスパーソンの仕事はビジネスだ。それは単なる金儲けではなく、ビジネスの場において会社を成長させ、そのことで自分も成長する。そのような場としてビジネスを捉え、会社を捉えている。企業価値の向上が自分の価値を高める。ビジネスパーソンというのはそのような志向性を持った人たちなので、CSRも「ビジネスとは企業価値を高める活動」という原則から逸脱することを認めない。そのことが、定量的に実証されたわけだ。

 また、「ビジネス重視派」は20~40代に多く、「慈善派」は50~60代に多いともいう。これは筆者も日々の活動で実感していたことで、30代や40代の社員が「CSR3.0」を実践したいというのでその企業にプレゼンしに行ったら、50代の執行役員に露骨にイヤそうな顔をされたという経験も数多い。「CSRは慈善ではなく、経営戦略としてやるべきだ」という主張がよほど気に入らなかったようだが、こうした年代的ギャップも経験としてなんとなくそうかなあと思っていたのだが、定量調査によって明らかになったことの意義は大きい。