とまれ、どのような企業の事業も生活者の志向を無視して成立するはずもない。企業の社会貢献はビジネス志向でやるべきだという層が多数を占めていることが分かった以上、CSRもその方向に向かうべきだろう。

CSRが成長のカギに。
顧客との共通価値を生み出す

 この方向性は、世界的にも決定済みだ。昨年(2011年)10月25日、欧州委員会はCSRに関する正式な政策文書を発表した。ここでは、欧州経済成長のドライビングフォースとしてCSRが位置付けられている。CSRは企業に、新しい市場の開発、成長の機会をもたらすと、ハッキリと述べられているのだ。CSRは常にヨーロッパがリードしてきたといっても過言ではないが、その欧州委員会は2001年にCSRをこう定義づけている。

 CSRとは、ステークホルダーとともに、自発的に、ビジネス領域に社会問題や環境問題への対策を組み込んでいく(統合させる=integrate)概念である。

 この「integrate」が日本ではなぜ「本業を通じたCSR」などと日本語化されたのかは分からないが、ともかく(欧州委員会の定義に従えば)CSRは最初から本業と社会貢献(とエコの)統合だったのである。

 そのCSRの概念を今回の政策文書で欧州委員会は、次のように再定義している。

 CSRとは、企業の、社会に対してさまざまな影響(impact)を与えることへの責任である。

 これは、これまでの定義と比べてより強く、企業の社会への関わりを迫る定義だと言えるだろう。

 さらに、CSVを最大化することを目標として定めている。CSVとは、マイケル・ポーターが昨年発表した論文で提唱した「Creating Shared Value」すなわち「共通価値」という概念である(欧州委員会の文書では「the creation of shared value」となっている)。

 CSVについては以前にも、この連載の第51回で少し触れたが、簡単に言えば、「これからの企業は、社会問題や環境問題への取り組みが生活者との間に共通の価値を生む。それが企業の競争力を高め、成長へとつながる」という概念である。

 ハッキリ言って、「共通価値の創造」というのは、マーケティング屋の立場から言えば特に目新しい概念ではない。マーケティングとは企業と生活者の間の共通価値を創造する行為そのものだからだ。

 もちろん、人の価値観は変わる。たとえば、世界中が金ピカの時代だった80年代と今とではまったく違う。高級スポーツカーに乗ってカワイイ女の子と海辺をドライブすることがカッコよかった時代から、石巻市の雄勝町や陸前高田市の広田町などに移り住んで漁師になるほうがカッコいい時代へと変わった。それほど人の価値観というのは変わる。CSVが効くのは、人々の消費行動の価値観が社会貢献へとシフトしているからだ。

 この消費行動のシフトについては、世界最大級のブランド価値データベースを所有するブランド・アセット・コンサルティング社社長のジョン・ガーズマ氏とピュリツアー賞受賞ジャーナリストであるマイケル・ダントニオ氏の共著『スペンド・シフト ~<希望>をもたらす消費』によって定量的・定性的に明らかにされた(原著は2010年10月発売。日本語版は2011年7月発売)。