昔から「口の健康は全身の健康の源」と言われてきたが、アルツハイマー型認知症に歯周病が関係しているとなれば、糖尿病や高血圧にも匹敵する深刻な問題である。なぜなら、歯周病は50歳代以上のほとんどの人が罹患している疾患であるからだ。

歯周病もアルツハイマーも
「炎症」が引き起こす病気

 では、歯周病はアルツハイマー型認知症に一体どう関与しているのか。その理解には、まず歯周病とアルツハイマー型認知症という二つの疾患を正しく理解する必要がある。

 一般的に、歯周病というと「口の中」に限定した病気として捉えられがちである。しかし、本来歯周病は、「全身性に炎症が継続している病態」として捉えるべき疾患なのである。歯周病は、歯肉や歯肉溝(歯と歯肉との溝)といった口内の組織に、歯周病の原因細菌が感染することを発端としている。

 人体はそのような細菌感染が生じた場合、自己防衛として炎症反応を起こす。歯茎が腫れて出血する、歯槽骨(歯の周囲の骨)が失われて歯がぐらぐらするといった歯周病の症状は、簡単にいえば、そうした外から入ってきた細菌に対する自己防御としての「炎症反応」の結果なのである。

 そしてこの「炎症反応」、病変局所だけに留まっていればいいものの、厄介なことに、さまざまな「炎症性物質」が作られて全身に波及するのだ。

 実際、重度の歯周病患者では、そうでない患者と比較して、全身の血中の炎症性物質の濃度が高値を示すことが分かっている。加えて、重要なことは、歯周病は長期に渡って全身性に炎症が生じている状態、すなわち「慢性の炎症性疾患」であることだ。

 一方で、アルツハイマー型認知症であるが、この疾患は脳にアミロイドβというたんぱく質が蓄積することが原因として知られるが、実は、アミロイドβが脳内に蓄積すると、脳の炎症に関わる細胞が活性化されて脳内に炎症反応が生じ、結果として正常な神経細胞が破壊されて脳の萎縮が起こるとされている。

 つまり、アルツハイマー型認知症は「脳の炎症」が原因で起こる病気なのである。

 以上から、歯周病とアルツハイマー型認知症、この二つの疾患は「炎症性」の疾患という観点から共通していることがお分かりであろう。