大学の国際化を進めることが、
労働者の増加につながる

 ところで、経済を成長させるもう一つの方法は、労働者を増加させることである。中長期的には、出生率2.0を回復したシラク3原則に象徴されるフランスの先例に学び、わが国の人口を減少させない施策をパッケージで実行することが要請される。もちろんこれは、成果が出るまでには少なくとも20年近くの年月が必要となる(たとえそうであっても直ちに着手しなければ取り返しのつかないことになる)。

 短期的にはアメリカの先例に学び、大学を国際化して世界各国から優秀な学生を集めることである。1995年から2005年にかけてシリコンバレーで産声を上げたベンチャー企業の実に52.4%は外国人留学生が創業メンバーに入っていたという話もある(エイミー・チュア『最強国の条件』)。

 異質な文化が接触する境界で、偉大な発明・発見がなされた先例は歴史上枚挙に暇がない。人類史上もっとも偉大な発明の1つとされるアルファベットは、紀元前2000年の原シナイ文字がそのルーツとされている。シナイ半島はエジプトのヒエログリフ文化圏とメソポタミアの楔形文字文化圏のまさに境界であったのだ。

 わが国の大学を国際化することは、すなわち大学の中に異質の文化が接触する境界をいくつも創り出す営為に他ならない。そして、異質の文化の接触を通じてベンチャー企業を次々と生み出すことが、わが国の労働力を増加させる最も即効性の高い施策だと考える。その意味でも、東大の秋入学には大きなエールを送りたい。

 わが国の出生数が戦後のピーク時(約270万人)に比べて、半減以下に落ち込んでいる現状(2010年で107万人)を勘案すれば、わが国の主要大学の定員の3分の1ないし半分程度を外国人枠に設定しても、それほど不自然ではあるまい。そして、世界各国から集まった優秀な学生に、起業の有無に係わらず、わが国に残ってしっかりと働いてもらうためにも、「年齢・性別・国籍フリーかつ同一労働同一賃金の原則」というグローバルな雇用環境を早急に創って行かなければならない。当面は、外国人の雇用者数に応じて企業にインセンティブを付与する(例えば税制優遇)施策も有効であろう。

 2020年には、2009年と比べてわが国の就労人口が実に400万人以上減少するとも見込まれている。医療や介護といった社会的なインフラ分野で、就労者の不足によりすでに破綻に瀕している地方もあると聞く。「労働者の増加」については、国を挙げて真剣に考え、取り組まなければならない。わが国に残された時間は、実はもうほとんどないのである。

(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)