EVには冷ややかな態度だったが
電池の研究は進めていた

 まずはEV。先にも述べたようにトヨタがこの10年、EVに関して冷ややかな態度を取り続けてきたのは確かだ。“ハイブリッド可愛さ”という感情的なものも少なからず含まれていたが、それだけではない。

「EVが顧客に欲しいと思ってもらえるような性能、利便性、耐久性、価格などについてバランスが取れた商品になるのは相当先のことだと思う。そうなるために必要なのはひとえにバッテリーと充電設備の技術進化。それ以外の技術はすでに相当コモディティ化(普遍化)しており、問題はない」

 2012年にトヨタが同社初のプラグインハイブリッドカー、初代「プリウスPHV」を発売したとき、技術者の一人はバッテリーEVについてこう語っていた。

 課題のうち車両側の要素であるバッテリーだが、トヨタは世界の自動車メーカーの中でも古くから、最も熱心に取り組んでいる1社だった。単独ないし電池メーカーとのジョイントで研究を進めていた。

 だが、それだけでは次世代電池の実現につながる知見が十分に集まらないということで、渡辺捷昭前社長時代の2008年、電池研究部なる組織を発足させた。

 この電池研究部は“自前主義”の色彩が濃いトヨタとしては異色の組織で、トヨタや特定の提携企業に限らず、研究機関や異業種企業などが幅広く参画できるオープンラボ方式を取っていた。

 設立を発表した2008年の「トヨタ環境フォーラム」の席上で渡辺氏は、

「電池の世界は電気化学の深淵とも言えるもので、我々だけで手に負えるものではない。しかし、良い電池ができればモビリティが変わるのは確か。オープンラボとしたのは、研究成果を誠実にシェアするという姿勢を示すことで多くの研究者に参画いただき、新しい電池を生みだす力になりたいから」

 と抱負を述べていた。

 昨年暮れ、2020年代前半の実用化というメドを公式に発表したソリッドステート電池は、電池研究部設立のときにすでに革新的バッテリーの第1段階のターゲットとされていたものだ。