相手に好かれる言葉づかいとは
初めての商談のときには、たいてい名刺交換をします。
そのとき、自分が渡した名刺をぞんざいに扱われると、いい気はしないものです。
名前とは自分自身。だからこそ、活用次第では、相手の好感度を高めるきっかけになります。
たとえば、話をするとき「そうなんですか」というのではなく、「そうなんですよ○○さん」と名刺で確認した相手の名前を入れてみましょう。
すると、相手は「何人かいる取引先のうちの一人」ではなく、もっと近しい特別な関係だと感じてくれます。
これが心理学でいう「自我関与」です。「○○さん」と、会話に自分の名前が入ることによって自我関与が生まれ、相手に対する好感度や関心が生まれやすくなるのです。
とはいえ言い過ぎは、相手にマイナス印象を与えてしまいかねません。
初めて会った男女を被験者として、名前を呼んだときの反応を調べた実験があります。
その結果によれば、15分間で6回以上呼ばれると、逆になれなれしいと受け止められました。
人には、その人間関係に応じて快適な距離感があります。名前を連呼しすぎると、知らず知らずのうちに相手が入って欲しくない領域まで踏み込んでしまって、好感度を下げてしまいかねません。
これを活用する際には、自分が本当に聞いて欲しいことや、相手に前向きにとらえて欲しいポイントに絞って活用したほうがいいでしょう。
異論がある場合でも、いったんは受け入れてみる
同じような使い方として挙げられるのが、会議や商談などでの意見の出し方です。
賛同する場合は、単に「いいと思います」というのではなく、「私はいいと思います」と、個人としての意思を相手に分かる形で表すと、好感度があがります。
逆に異論がある際は、最初から「どうかと思います」と否定するのではなく、いったんは受け入れてみること。「なるほど、そんな考え方がありましたか。ただ、もしかすると、○○についての不安があるかもしれないですね」と言ってみるのです。
相手としては「自分の意見を否定されているわけではなく、改善点を話してくれているのだ」と受け止めることができます。
「忌憚のない意見を言ってください」
と会議などでよく言われますが、「今日は無礼講だから」という上司の言葉と一緒で、うのみにすると痛い目に遭いかねません。
人は、基本的に自分を否定されることを嫌うからです。
だからといって、無理して賛同する必要はありません。忌憚のない意見を、相手を否定しない形で話すスキルが大切なのです。立場が変われば、正解も変わります。
自分にとっては受け入れがたいことが、相手にとっては正解であったりするのです。それを「あなたは間違っている」「いや、あなたのほうがおかしいのではないか」といっても話は前に進みません。
まずはお互いの意見をテーブルに広げて、二つの正解が重なる最適解を見つけることが、ビジネスにおける会話です。
人の見た目が、こちらの印象を相手におおざっぱに届けるものだとすれば、言葉は、それを具体的に印象づけるコミュニケーションの手段です。だからこそ、相手目線での言葉使いが、とても重要なのです。