その理由としては、社内の意思決定権者にデジタルネイティブが圧倒的に少ないということや、ベンチャー企業のスピード感に従来型の意思決定の仕組みそのものがついていけてない、ということもあるでしょう。しかし、そのような組織が、ベンチャー投資に無関係でよいのかと言えば、もはやそのような時代ではないと断言できます。

 デジタルが浸透しつつある現在の世界において最も重要な資産は、「デジタルデータ」であると言われています。今年の1月26日に閉幕した世界経済フォーラム(WEF)のダボス会議でも、このままではプラットフォーマーとして巨大化する一部のIT企業が豊富な資金力を背景にますますデジタルデータを独占してしまう、と警鐘が鳴らされました。

一定の仮説を持って投資し続けた
企業のみが生き残れる

 急速なデジタル化により、従来提供していた価値の形が変質し、従来の企業にとって、今まで競合だと思っていた同業企業ではなく、まったく異業種のIT企業が競合となっているという話は、最近経営者の間で特に話題になっているテーマでもあります。自社が提供する製品やサービスの本質的な提供価値は何なのか、そういった観点で事業を根幹から見直し、変質化しつつある人々の価値観をとらえるために、一定の仮説を持って積極的に投資し続けた企業のみが、変革の時代に生き残れるのだと思います。

 そしてデジタル化やデジタル化による価値観の変化の余地は、まだ大きいと思います。身の回りには、消費の場面でも仕事の場面でも不便なことがたくさん潜んでいます。企業はそのようなペインポイント(悩みの種)に敏感であり続けなければなりません。実際にその課題を解決する際に、利用者の声に注意深く耳を傾けることで、潜在的なニーズに対応できるような製品化・サービス化を実現できる、というチャンスが私たちの周りにはあふれているのです。

 自社の事業領域の周辺で、既存アセットを活用した新規事業やコア領域における別の切り口での事業構築、ひいては新たな成長基軸の構築を行うために、自社で事業を立ち上げるための投資を行ったり、自社で取り組みたい事業と類似した事業内容のベンチャー企業への投資を行ったり、と選択の幅が増えているのも事実です。一定の投資ノウハウを自社に取り込み、数ある投資機会を素早く評価し、GO/NO GOの判断を迅速に行っていく。そういった取り組みの重要性が、企業が生き残り、成長していく手段としてますます高まっています。

 大企業としては、デジタルネイティブではないがゆえに、スタートアップのように一点集中や小回りが利かないこともあるでしょう。でも、その反面、いかに潤沢な資金力を背景に、多様な機会に、数多く、かつ戦略的に「張りまくって」いくか(最近ではソフトバンクのモビリティ領域への投資に見られるられるように)、がポイントになっていくのではないかと考えています。