関東大震災では、トヨタ、シャープが誕生した

 このように、大震災を契機に新しい企業・経営者・ビジネスが台頭してくるという動きは、過去の大震災の時にもありました。たとえば、1923年に起きた、関東大震災がきっかけで誕生したのは、トヨタ自動車やシャープです。

 トヨタ自動車創業者である豊田佐吉は、関東大震災のがれきの中で、支援活動に来たアメリカ軍のトラックやジープが大量に走り回る様子を見て衝撃を受けました。そして、日本でもこのような自動車を作りたいと強く思うようになります。

 豊田家のそれまでの中心的なビジネスは自動織機でしたが、そこに自動車製造が加わることになり、その後トヨタ自動車はトヨタグループの中心企業、さらには日本屈指の優良企業へと成長を遂げていくことになります。

 また、シャープの創業者である早川徳次は、関東大震災で子供と奥さんを亡くしてしまいます。このことをきっかけにして早川氏は人生観を大きく変え、企業家として大きなチャレンジに出ます。

 シャープはそれまで東京でシャープペンシルの製造をしていたのですが、本業のシャープペンシルの工場を売却してしまい、拠点も大阪に移し、国産ラジオ第一号の開発に取り組みます。試行錯誤の末に早川氏の執念が実ってラジオ開発に成功し、それを売り出して大成功します。こうして、日本を代表する家電メーカーのシャープが誕生したのです。

 今回の東日本大震災の後も、やはり、過去の震災時と同じように、人生を深く見つめ直すという機運が国中に広まり、その中で、「日本をなんとかしたい」というマインドや、「1度きりの人生だから大きな夢にチャレンジしよう」というマインドがさまざまな形で沸き起こっているようです。

 おそらく、三木谷氏、豊田佐吉氏、早川徳次氏のように、これを契機に新しいビジネスを生み出す経営者も出てくるでしょう。

今後のベンチャー企業は期待大!

 私はベンチャーキャピタリストとして、ベンチャー企業の動きにも普段から接したり目にしたり耳にしたりしていますが、やはり、今回の震災後も新しいビジネスや会社を立ち上げようという動きが明らかに活発化してきています。こうした中から、今後の日本を変えるような企業が必ず出て来ると思います。

 最近では、株式市場への新規上場する企業数も回復基調ですし、経営者の質も明らかに高くなっています。これだけの経済状況と株式市場の低迷が長引く中で上場するにはパワーのある経営者でなければなりません。実際にお会いしてみると、経営にかかわる姿勢の真摯さ、目標や理念の高さに感銘を受けることが多いのです。

 今後、ベンチャー企業からさまざまなスター企業が登場し、その中からは日本を代表する企業に化ける会社も出てくることでしょう。ファンドマネジャーとして、また超成長株をザクザク発掘するチャンスが到来していると感じ、大いにワクワクしているところです。

 日本株はこれから大復活するのです。もう日本株はダメだと思う人たちに、私は、声を大にして言いたいと思います。
「日本株をバカにするな!」

※最終回は『誰が「投資信託」をダメにしたのか 日本の99%のアクティブ投信が買えない理由』です

■著者紹介
藤野英人(ふじの・ひでと)
レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)。
1966年富山県生まれ。90年早稲田卒業後、国内外の運用会社で活躍、特に中小型株および成長株の運用経験が長く、22年で延べ5000社、5500人 以上の社長に取材し、抜群の成績をあげる。中でも99年には500億円⇒2800億円にまで殖やす抜群の運用成績を残し、伝説のカリスマファンドマネ ジャーと謳われる。
その後、2003年に独立、現会社を創業。現在は、販売会社を通さずに投資信託(ファンド)を購入するスタイルである、直販ファンドの「ひふみ投信」を運用。ファンドマネジャーとして高パフォーマンスをあげ続けている。
主な著書に『【図解】スリッパの法則 5000人の社長に会ったプロが教える! 伸びる会社vs危ない会社の見わけ方』(PHP研究所)、『もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら』(阪急コミュニケーションズ)、『運用のプロが 教える草食系投資』(共著:日本経済新聞社)他

ツイッター @fu4
ひふみ投信 http://123.rheos.jp/

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