野田佳彦内閣は、消費税率10%への増税を含む「社会保障と税の一体改革」の大綱を閣議決定した。自民、公明両党が事前協議を拒んだままで、3月に予定する消費増税関連法案の国会提出は、与党単独となる見通しだ。自公は衆院解散に追い込むために攻勢を強めている。また、民主党内は増税反対派を多数抱え、混乱が懸念される。だが、それでも「財務省の悲願」消費税増税は、実現する可能性が高いと考える。
税制改革に関する自民党政権と
民主党政権の継続性
この連載では、税制改革を80年代後半の「政治改革」以降の約20年に渡る日本政治の潮流の中に位置づけてきた(第21回を参照のこと)。「小選挙区比例代表並立制」導入による党執行部の「公認権」「人事権」強化で、派閥の求心力は失われ、次第に地元への利益誘導よりも、政策実現が重視されるようになった。
税制改革においても、業界間の利害調整の意義が薄れ、「政策通」による論議が行われるようになった。自民党政権末期には、財務省と関係が深い与謝野馨氏、柳沢伯夫氏らにより、消費税率を引き上げて、税収の全額を年金、医療、介護など社会保障の給付に充てる「社会保障目的税化」が提唱された。
2009年9月に誕生した民主党政権でも、税制改革に関しては自民党政権との継続性が維持された。税制改革を主導したのは、野党時代から財務省と厚い信頼関係を持ち、消費税増税と社会福祉目的税化を一貫して主張していた藤井裕久財務大臣、野田佳彦・峰崎直樹財務副大臣(当時)らだった。また、民主党政権は形骸化していた「政府税調」を再編成し、実質的な意思決定の場とするとともに、11名の委員のうち4名が旧政府税調委員である「専門家委員会」が設置した。
民主党政権は、「経済財政諮問会議」を休止し、各省庁の「審議会」の議論を停止させて、政策立案機能を破壊する蛮行に及んだ。だが、税制改革に関してだけは、意思決定システムの構築に成功した。財務省と藤井氏・峰崎氏ら民主党内の財政通は、政権交代前から税制改革の議論を積み重ねていたと考えられる(前連載第61回を参照のこと)。
菅直人内閣末期に「税と社会保障の一体改革」の原案が決定した。与謝野氏を経済財政相に起用して作成した案は、自民党政権の税制改革案をほぼ踏襲した内容となった。