米国が対中国の外交カードを
持つことになる可能性も

 仮に、米中が全面的な貿易戦争を始めたとすると、米国も被害を被るであろうが、中国の被害はそれをはるかに上回るものとなるだろう。

 というのも、米国の対中輸入額の方が圧倒的に大きい上に、GDPは米国の方が大きいのだから、相手国向け輸出のGDP比は中国の方が圧倒的に大きくなるからだ。

 米国が、中国から輸入している商品は、「国内でも作ることができるが、中国の方が人件費安いから輸入している」というものなので、対中輸入を制限しても、多少のコスト高さえ覚悟すれば、国内で作ることができる。それに対し中国は、対米輸入を制限しても国内では作れないため、他の先進国から輸入せざるを得ない。

 つまり、米国は、「俺は1痛むかもしれないが、お前は10痛むぞ」という戦いを挑むことができるわけだ。これは、対中の“外交カード”として利用できそう。例えば、「北朝鮮への制裁に協力しないなら、対中貿易戦争を開始するぞ」などと言って、中国の協力を強要することもできそうだし、「尖閣諸島に攻めてきたら、米中貿易戦争を開始するぞ」と言っておけば、中国は自制するかもしれない。

 外交においては、相手に“出方”を読まれないことも重要だ。その点、トランプ大統領であれば、「彼は何をしでかすか分からない」という恐怖心を中国に与えることができる可能性もある。

 こうした戦略によって、北朝鮮や尖閣諸島をめぐる状況が少しでも改善すれば、それは日本にとって大きな“漁夫の利”となる可能性を秘めているといえる。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)