最近目立つのが、パワーポイントで見せ方を整えることに気を取られるあまり、内容の工夫が疎かになっているケースだ。ビジュアルで見やすくなっている分、内容の薄っぺらさがかえって目立ち、準備している段階で、なぜこれで不安にならないのだろうと理解に苦しむという管理職の声をしばしば耳にする。

 あまりに楽観的なりすぎると見通しが甘くなり、準備段階で大事な点を見逃したり、気持ちの緩みから初歩的なミスをしたり、思いがけない展開への対処が上手くできなかったりするために、上司が結局、尻ぬぐいをしなければならなくなる。B君がまさにそういったタイプだ。

 逆に、不安が強いために上手くいっているタイプもいる。不安ゆえに用意周到に準備を行い、起こり得るあらゆる状況を想定し、その場合の対処法を検討しておくことで、物事を滞りなく進行させる。そんなタイプがC君だ。

ポジティブ思考を吹き込まない!
「不安の持つポジティブ・パワー」

 そこで注目したいのが、米国の心理学者ジュリー・ノレムとナンシー・キャンターの「防衛的悲観主義」という考え方である。

 防衛的悲観主義とは、これまで実績があるにもかかわらず、将来のパフォーマンスに対してはネガティブな期待を持つ傾向を指す。実際には成果を出しているのにもかかわらず、「今度もきっと上手くいく」と楽観できないまま、「上手くいかなかったらどうしよう」と不安になるタイプである。

 このタイプの場合、将来のパフォーマンスに対して不安があり、楽観的になれないがために、起こり得るあらゆる状況を想定し準備を行っていることが、成績の良さにつながっているのである。そのようなタイプに対してうっかりポジティブ思考を吹き込んでしまうと、せっかく上手く機能していた成功回路を崩し、かえってパフォーマンスを下げてしまうことになるから注意しなくてはならない。

 ノレムは、防衛的悲観主義の効用を説こうと、「不安の持つポジティブ・パワー」を証明するため、知能テストに似た問題をやらせる実験を行った。

 実験を始める前に、防衛的悲観主義の人たちをA、B2つのグループに分けた。そして、Aグループの人たちに自分の課題の出来を予想してもらったところ、自分の出来をかなり低く予想していた。これは、防衛的悲観主義者として当然の傾向と言える。
 
 一方、Bグループの人たちには、「あなたの実力なら、きっと上手くやれるはず」と鼓舞することでポジティブ思考を吹き込んだところ、その言葉に感化されて楽観的になり、Aグループよりも良い成績を予想した。これも当然の傾向と言える。

 ところがこの実験で興味深いのは、両グループのその後の実際の成績比較である。

 Bグループの人たちは、「あなたの実力なら、きっと上手くやれるはず」と言われ、ポジティブな心構えを持つことで、そう言われなかったAグループよりも良い成績を予想したわけだが、実際の成績を見たところ、ネガティブなままだったAグループよりも悪かったのである。