対話で自己信頼の
ピンチをチャンスに

 最後に挙げたいのは「対話の活用」だ。凸版印刷は、職種を超えて営業部門に異動したミドル30人を集めた、対話ワークショップを実施した。個人や職場活性化のための教育やコンサルティングに取り組む関連会社、トッパンマインドウェルネス(TMW)に実施を依頼した。

 いくら経験豊富なミドルでも、仕事内容が大きく違う職種へ異動すれば、仕事の進め方を知らないという点では新入社員と変わらない。うまく新しい職場に適応できなければ、それは即、自己信頼低下のピンチとなりかねない。

 ワークショップでは、まず参加者の半数が1人ずつ、最近の体験を物語にして話す。聞き手には予め「尊重」「承認」「学び」など、人の普遍的な欲求が書かれたカードが多数用意されており、語り手が話を終えたら、聞き手は「今の話を通じて、語り手が本当に求めていることは?」を示すカードを語り手に差し出す。「いつも家族とけんかばかりだが、本当は信頼されたい」といった、自分では素直に認められない感情も、カードで他者から示されると共感が生まれ、すんなりと受け入れられる効果があるという。

 こうしてつながりのある場を形成したうえで、「異動先に何を求めたいか、逆に異動先は自分たちに何を求めているのか」を全員で話し合った。職場に求めるものとしては、「自分の価値を認めてもらいたい」「もっと教えてほしい」といった声が上がった。一方、職場が自分たちに求めていることは、「早く一人立ちを」「自分で仕事を見つけて」「自分からコミュニケーションしてほしい」などが挙がった。最後は参加者全員が、「いい仕事をして新しい職場に貢献したい」という思いで一致できた。

 成長社会で成功体験が多いときは、少々の失敗は放っていても、それを上回る成功で帳消しになる可能性が高い。だが低成長下では、失敗体験を積み重ねるうちに自己信頼が低下し、悪循環から抜け出せなくなることもあるだろう。企業がミドルに対話の場を提供し、マイナス経験をも内省し、「それでもこんな学びはあった」と自己信頼を取り戻してもらう。対話は、自己信頼のピンチをチャンスに変えるきっかけとなるのだ。