汚職事件」と「お食事券」であれば、「警察が」という言葉から「汚職事件」と判断し、これが食堂の会話であれば「お食事券」と判断できます。

 よく、「日本語は同音異義語が多い」と言われますが、確かにそれは事実です。
 ただ、日本語の場合には、発音は同じでも漢字が(文字が)まったく異なるためにそれをより強く感じるだけで、同音異義語は英語にもたくさんあります。

 有名なところでは、“run”でしょうか。
 学校教育では私たちはまず「走る」と教わりますが、“run”には非常に多くの意味があります。
 ただ、英語の場合には漢字がありませんので、意味が違っても表記はあくまでも“run”であるというだけの違いです。

 いずれにしても、日本語でも英語でも、同音異義語を正しく判断できないと会話そのものが成立しません。

「死んでいません」は、
「死んでる」の?
「生きてる」の?

 第1回連載では、とあるポータルサイトの翻訳サービスは、単に英単語を日本語に当てはめ、かつ、文法の変換を行っているだけの「ヒトが教えた丸暗記翻訳」であるのに対し、「Google翻訳」は、「語句の並びや語句の組み合わせに重きを置いて、その意味ベクトルをもとに翻訳するシステムである」という話をしました。

 今回のテーマは「翻訳」ではなく「会話」ですが、AIの仕組みが「丸暗記」なのか、「意味ベクトル」なのかは、AIの会話能力にもそのまま当てはまります。

 そして、丸暗記システムには大きな弱点があります。