しかし、僕はそうは思わない。たとえ僕がキャッチャーのリードどおりのボールを投げたのだとしても、やはり打たれた原因は、ボールにキレがなかったとか、バッターからボールが見えやすいフォームでこちらが投げてしまった、ということにもあるはずだからだ。何より、キャッチャーの出したサインに僕自身が納得してから投球しているのだ。すべてピッチャーの責任……僕はそう考えるので、打たれてしまっても、「なぜ、あそこでこのサインを出したんだ!」などとは思わない。

ソフトバンク和田投手が語る「当事者しか知らない投手と捕手の関係性」

 あくまでも僕個人の印象だが、アメリカのメジャーリーグでのバッテリーは、僕が考えているような関係性に近かった。リードをするのはもちろんキャッチャーだが、打たれたときはピッチャーの責任だという雰囲気が感じられたのである。

 キャッチャーのサインに頷いたのは、自分で納得した証。これが僕の基本スタンスだが、まれに“納得しないまま”投球する場合もある。それは若いキャッチャーとバッテリーを組んだ場合だ。一昨年のシーズン、僕が登板する試合では、若手の(山下)斐紹(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)がマスクをかぶる機会が多かったが、彼とバッテリーを組むに当たっては、首脳陣から「彼をうまくリードして育ててほしい」という明確なオーダーがあった。

 もちろん試合展開にもよるが、点差にある程度の余裕がある場面では、「僕ならここでこの球種は投げないかもしれないな……」「この流れでこのコースに投げるのはちょっと違うんじゃないか」と思うことがあっても、あえてキャッチャーのサインどおりに投球することもあった。そして実際に打たれてしまったときは、そのイニングが終わったあと、または試合後に一緒に反省会を開いたりもする。「あの場面、前の打席と同じ攻め方でよかったのかな? いくら苦手なコースでも、同じところに続けて投げるとやっぱり打ってくるね」というような具合だ。そうやって実戦のなかで配球の勉強をすることは、若手キャッチャーの成長にとっても、非常に大きな意味があると思う。

 僕らベテランピッチャーは、若手キャッチャーを育てるという役割を求められる場合もあるのだ。また逆に、先輩キャッチャーが若手ピッチャーを育てる場合もある。

 僕がプロ入りした16年前、当時のホークスでは、26~27歳くらいだった城島健司さんがレギュラーマスクをかぶっていた。プロ野球ファンの中では、城島さんというと、“豪快”というイメージを抱いている方が多いのではないだろうか。しかし実際は、とても繊細で、じつに細かいところにまで気を遣ってくださる方だ。僕はあまり血液型占いを信じる方ではないが、わかりやすさを優先して言えば、城島さんは典型的な「A型タイプ」である。