ワールドカップ予選史上で、オーストラリア代表に初めて勝った余韻が残る埼玉スタジアムの記者会見室で行われた公式会見。プライベートな問題を抱えているとして、ハリルホジッチ前監督は辞意を匂わせながらわずか8分で切り上げた。一夜明けた9月1日に急きょ開いた会見では一転して続投を表明したうえで、こんな言葉も残している。

「ともに仕事をしている全員が、私のやり方に同意したわけではなかった」

 批判的だったメディアだけでなく、JFAの技術委員会にも向けられた意趣返しだったと言っていい。技術委員会によるサポートやフォローが十分ではなく、エキセントリックで独善的な性格がさらにエスカレートし、結果として選手たちとも大きく乖離してしまったとしたら――電撃的に下された解任の判断は、理解に苦しむ部分の方が大きいと言わざるを得ない。

ハリルが求めた「世界では当たり前のこと」

 しかも、情熱や日本代表へ注ぐ愛情と表裏一体と言っていい、ハリルホジッチ前監督が見せてきた妥協のない厳しさや頑固さが、すべての選手たちから疎んじられているわけでもなかった。

 例えばほぼすべての試合で招集されてきたDF槙野智章(浦和レッズ)は、ハリルホジッチ前監督が就任した当初の個人面談で、指揮官がわざわざ編集してきた映像をもとに、実に20項目ならなる「ダメ出し」を突きつけられた。

「その後の代表合宿でも『ここを直せ』と何度言われたことか。それでも代表に呼んでくれて、怒ってくれるのは、僕のことを常に見てくれているから。監督の厳しさが僕を成長させてくれるし、僕自身を『もっと変わらなきゃいけない』という気持ちにさせてくれるので」

 歯を食いしばりながら努力を積み重ねた結果として、槙野は昨秋からセンターバックのレギュラーに定着した。鹿島アントラーズへ約7年半ぶりに復帰したDF内田篤人は、右ひざのけがもあって長く遠ざかっている日本代表への思いを問われると、苦笑いしながらこんな言葉を残している。