例えば、小型といえども高性能になっている小型衛星の撮影機能を使えば、コンステレーション(複数の人工衛星を連携させる運用法)で連続的に周回して地球を捉えることで、一刻一刻その変化を見ることが可能になります。

 あるショッピングモールの駐車場に停まっている車の数を、時系列で分析することができる。植えられた作物の生育状況を宇宙から把握することができる。牧畜では、牧羊犬に代わって牛を管理することができる。魚群探知機の精度を高めていくことができる……。

 こうした情報は商品相場にも影響を与え、投資銀行やヘッジファンドなどの金融機関にとっても望まれるものです。大気のビッグデータを集めて天気予報の精度を高めたり、衛星写真を用いてゴルフ場やイベント場所など局所的な天気予報も可能になれば、どうなるでしょうか。

 小型通信衛星によるコンステレーションで安定したネットワークをつくることができれば、今はまだインターネットがつながらないエリアもカバーできるようになります。

 地図情報と組み合わせることで、車の自動運転に結びつけることができる。バスの運行状況が適切なのか、どの時間帯が混むのかがわかれば、時刻表づくりも変わっていくでしょう。決済システムが導入され、eコマースが地球の隅々までいきわたれば、大きな経済発展がもたらされます。

 そうした地球を観察することで手に入るビッグデータや通信環境は、今後、IoTやAIの進化と結びついて、製造、サービス、流通、医療、金融、娯楽、教育、農業、漁業、防災などのあり方を激変させ、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。このデータは、第4次産業革命を駆動させる大きなピースとなるのです。そして、この通信環境は5G時代にシームレスなコネクティビティーを実現します。事実、現在打ち上げが計画されている小型衛星の数は、地球観測衛星で約1000機、通信衛星では2万機を超えるほどの規模になります。

 宇宙はもはや、特別な場所ではありません。それはビジネスチャンスを大きく拡大する場所です。デジタル化が急速に進む中で、宇宙は再びイノベーションのフロントとして期待されているのです。

 無重力空間を使って、地球では行えない創薬開発のための実験や高品質材料の製造をする。月の氷を資源として利用する。資源がたくさんありそうな小惑星を分析し採掘を目指す。国際宇宙ステーションに“旅行”として滞在する……。こんなことも、もはや夢物語ではありません。

 実際、ラスベガスのホテル王であるロバート・ビゲローは、宇宙でもホテル王になることを目指して、これまでに300億円以上の投資を行っています。月も、もはや目指すものではなく、これから「経済活動」をする場所だという認識で、月を舞台にした民間主導のコンペティション(技術開発レース)もグーグルをスポンサーにして行われています。

 火星への飛行も真剣に検討されています。イーロン・マスクは火星飛行が可能な大型宇宙船を発表し、人類が火星に居住することを目指した取り組みを進めています。火星の資源の活用や、自給自足のための植物生産などの研究も進んでいます。アラブ首長国連邦では、100年後に現地にミニシティーを建設すると発表し、国をあげて火星への取り組みを進めています。

 こうした宇宙開発の商業化とも言うべき大きな流れが起きたのは、2005年のアメリカ政府による政策変更でした。スペースシャトルの後継機の開発は民間に任せて、NASAは一顧客として民間から打ち上げサービスを購入するという大転換があったのです。

 2010年にオバマ大統領が出した「新国家宇宙政策」では、そうした民間企業の技術やサービスの購入、競争に通じる起業の促進、インフラの商業利用、輸出の促進などがはっきりと示されており、官民連携で宇宙開発の商業化が推進されてきました。

 実際、2005年に17兆円だった宇宙ビジネスの世界市場「スペース・エコノミー」は、2016年には実に33兆円にまで拡大しています。

 このうち各国の宇宙予算、いわゆる公的なマーケットというのはもはや25%に満たなくなっています。すなわち、民間の商業によるサービスやプロダクトが大きく伸びてきたのです。しかも10数年でほぼ2倍という市場スケールになっています。

 これにともなって、投資も急激に拡大しています。世界の宇宙関連ベンチャーへの投資は2015年、前年の約500億円から、5倍の約2500億円へと大きく膨れあがりました。2016年には約3000億円に、2017年は約500億円減って約2500億円ですが、2000億円を超える高い水準で推移しており、特にベンチャーキャピタルの関心が高いことがわかります。宇宙は今や、期待値の高い優良投資先という認識が広がり、ビジネスの場になったのです。

 私は宇宙ビジネスコンサルタントとして、こうしたステージの大きな変化を間近に見てきました。