グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏が、その圧倒的な経験の全てを込めた新刊、『どこでも誰とでも働ける』が4月19日より発売となります。この連載では同書の一部を先行公開します。
ITの専門家であり、また前回紹介したように、毎日何人もの視点で情報収集を行なう尾原氏は、どのようにグーグルを活用しているのでしょうか。

グーグルが最高のブレスト相手になる理由

 情報はできるだけオープンにしたほうがいいといっても、まず核となる知識がなければ、誰かから一方的に与えてもらうだけの「くれくれ」状態になってしまいます。 わからないことはまずググる。これがすべての基本です。そうして調べたものは、積極的にオープンにする。この順番を間違えてはいけません。

 グーグルが登場したのは、1999年頃のことです。検索の主流がディレクトリ型からロボット型に切り替わるタイミングでした。何より衝撃を受けたのは、検索結果が表示されるまでの速さです。たとえば、「尾原和啓」でググると、「約30800件」ヒットして「0.33秒」かかったと表示されますが、これが1秒を切るか切らないかというのが大きな問題でした。結果が表示されるまで1秒を切ってくると、思考を途切れさせないからです。

 思いつくまま入力して、どんどん検索すると、ポンポンポンとラリーのように返ってくる。そうなると、検索エンジンがブレスト相手になるのです。

 結果が表示されるまでに1秒以上かかると、そこで思考が途切れます。ディレクトリ型のように、結果にたどり着くまで何クリックもしなければならないようでは、探すこと自体が目的になってしまって、考えが深まらない。このスピードの違いは致命的でした。

 検索エンジンとしては最も後発といってもいいグーグルが、先行するサービスのほとんどを葬り去ったのは、「ページランク」という独自のアルゴリズムで、価値あるウェブサイトにヒットする率が異様に高かったから、というのが主な理由です。しかし、結果表示のスピードが抜群に速く、検索があたかも対話のように利用できるようになったから、というのも大きかったと思います。

転職12回のITの専門家はどのようにGoogleを使っているのか?

 ブレスト相手としてのグーグルは、どんどん進化し続けています。ここでは、ぼくなりの情報収集の方法もお伝えしておきましょう。

 検索キーワードを探す基本動作はグーグル検索ですが、新着コンテンツを中心に見て回るときは、グーグルアラートが便利です。自分の検索キーワードを登録しておけば、毎日、関連ニュースをメールで知らせてくれます。

 ぼくが社会人になってから習慣としてずっとやっていたのは、出会った人のうち、これぞという人の名前を全部登録しておくことです。当時はまだグーグルアラートはなかったので、日本経済新聞の記事検索サービス「日経テレコン」を使っていましたが、登録済みの名前が記事に出ると、毎日メールで知らせてくれるわけです。

 本人に会ったときに「あの記事よかったですね」と言えば相手の方にも喜んでいただけるし、「あんな小さな記事に気づくとは、尾原は新聞を隅々まで読んでいるんだな」と、いい意味で誤解してもらえます。

「日経テレコン」は主要メディアだけが対象ですが、グーグルアラートはブログを含めたほとんどのメディアが対象なので、営業の人は取引先を、広報の人は自社の社員の名前を登録しておけば、強力な武器になるはずです。

 また、自分が関心をもつキーワードが、いつ・どこで・どれくらい検索されているかは、グーグルトレンドで調べることができます。検索回数の多さは、ニーズの強さを意味します。ということは、それがビジネスにつながる可能性が高い。

 さらに、自分でもそのワードについてブログやSNSで情報発信していた場合、自分の書きこみが検索結果の何位に表示されるかで、同じ関心をもつ競合の多さや、自分の立ち位置をつかむことができます。そのワードに関する検索上位を狙うのか、あるいはもっとニッチなワードを見つけて、そこで一人勝ちを目指すのか。そのキーワードがもつ市場価値を知ることで、いろいろな手を打つことができます。

 アカデミックな論文を対象にしたグーグルスカラーもよく使います。もともとグーグル検索の「ページランク」のアルゴリズムは、被引用数によって学術論文を評価するシステムをもとにつくられたくらいですから、学術論文というのは参照構造がしっかりしています。その意味で、いまホットなおもしろい論文を探すのは意外と簡単なのです。それに論文の冒頭には要約がついていますから、手間も省けます。

 とくに最近は、マーケティングや組織論、意思決定に影響を与える心理的バイアスなど、ビジネス関連の論文がすごく増えているので、なぜみんな論文を読まないのか不思議なくらいです。

 ちなみに、ぼくは毎年、その年に読んだ紙の本と電子書籍、論文を棚卸ししているのですが、去年いちばん数が多かったのは論文でした。グーグル翻訳の精度が上がって、英語の論文も非常に読みやすくなったので、最新の研究成果に出合える場としておすすめです。