この30年間で日本は豊かになったのに、
なぜ日経平均は上がらないのか
ちきりん 私が不思議だなと思うのは、9000円台の日経平均って30年くらい前と同じ水準ですよね。連続性があるといわれている指標が、30年前と今とで同じ水準ということは、「日本経済が生み出している価値は30年前と変わってないですよ」という話になるわけですよね。ところが一方で、藤野さんが本の中でも言っているように、30年前の生活と今の生活を比べると、今の方が圧倒的に便利で快適になっている。
藤野 かなり便利になりましたよね。
ちきりん 実は私は、学生のころに起業の真似事みたいなことをしたんです。その時に、一番不便だったのは注文を受けることでした。当時はインターネットもケータイ電話もなくて、固定電話で注文を受けなければいけなかったんです。しかも当時の電話機には留守番機能もないし、転送機能もなかった。つまり、注文を受けるためには、物理的に固定電話の前に居続けなければならなかったんです。今だったら、携帯がありネットがあり、電話だってモバイルフォンに転送できます。
当時の私は、「小さな会社だと全部自分でやる必要がある、固定電話の前で注文待ってるなんて、あたしには全く向いてない」と思ったんですど、今はあらゆることが簡単・便利になっていて、やろうと思えば学生だってビジネスを気軽に起こせます。
藤野 通信に関していえば劇的に便利になりましたよね。NTTが分割して民営化し、その後インターネットやケータイも普及して……。
ちきりん 30年前ってコンビニはもう東京にけっこうあったと思います。でも、ケータイはまだないし、ネットもないし、本を買いに行くのも、家の近くには小さな本屋しかないので、わざわざ新宿の紀伊国屋書店までいかないといけない。そのために交通費払って、買いに行って、そこで「ありません」と言われてガッカリして帰るみたいなこともあったわけです。
服だって、ユニクロの品質の服をあの値段で当時、買えたかというと、ありえないですよね。フランスの高級ワインも当時2万円くらいしていたのが、今は3000円で買えるしとか。
藤野 だから、90年の日経平均株価が3万8000円だとしても、あの時代に戻りたいと思わないですよね。
ちきりん 本当にそうですね。でもそこで藤野さんにお聞きしたいのですが、それなら、なぜ日経平均は上がってないのか。なぜ、日経平均は日本経済の状況をきちんと表す指標であり続けていないのか、ということです。日経平均を算出するための225銘柄は、時代に合わせて適宜銘柄を入れ替えていますよね。