社会によい、と思われることを無理に始める必要はない。それよりも、「わたし」を主語に、自分が気づいたこと、気になること、大切だと思うこと。その気持ちに火をつけて、直に現場で体感してみよう。ずっと挑戦してみたかったことを、いま、始めてみよう。そこからたくさんのことが始まる。そのチャレンジを「マイ・プロジェクト」として、取り組んでもらっている。

 「マイ・プロジェクト」では、必ず、2枚のシートを書いてもらう。1枚は「Me編」、もう1枚は「Project編」だ。「Project編」では、テーマを自由に設定し、自分が以前からずっとやってみたかったこと、気になっていたことに取り組んでもらう。お客さんを具体的に設定することが大切だ。

 そして、実際にできることから始めていく。まずはリサーチでも、インタビューでもいい。小さなイベントをするのもいい。現場の数だけ、リアリティがあり、気づきがある。そこから、大きな学びと成長を得られる。

  じつは、何より大切なのが、「Me編」だ。ここに、自分の歴史や自慢歴を描いてもらう。小学校のときに好きだったもの。高校生のときはバンドをやっていたかもしれない。必ず、誰にも「これは!」という何かがあり、それをみんなで祝福する。おもしろがる(実際に、おもしろい)。自分が何者なのか、挑戦の背景や今描いている夢を、仲間が知っている。居場所が生まれ、これが挑戦するために必要な、土台となる。

「おやこくさい交流」から気づいた、世界の変え方

 以前、日韓の国際交流に関心のある学生がいた。彼女のビジョンは壮大で、日韓の交流から、世の中に平和をもたらしたい、という。では、何をすれば、それがかなうのか。

 ぼくらは彼女の物語も、その先に描いていることも知っていた。だからこそ、プロジェクトは「いつでも、ミッションにむけて変更可能」だった。

 ある日、彼女のプロジェクトは、思わぬ方向に向かう。

 日韓交流に興味を持って活動していた彼女。でも、ちょっと待って。その前に、そういえば、「私、お父さんとうまく話せない」。自分にとっては、外国人以上に、遠い存在かも! そこで考えた「おやこくさい交流」というマイ・プロジェクト。どうしたら、お父さんとうまくコミュニケートできるんだろう、という試行錯誤がそこから始まった。

 ここでは詳細は割愛するが、彼女は、何度も方法論を変更し、試行錯誤しながら、最終的に「お父さんの話を、(いつもと違い)うなづきながら聴いてみる」というところに辿り着く。一見シンプルだが、この実践知は、じつは、とても大切な、さまざまな目に見えない現状のシステムを変換するヒントに溢れていた。