作曲AIが
巻き起こすであろう著作権問題

 さて、言うまでもなく楽曲には著作権があります。
 ここでは、歌詞ではなく作曲に話を絞ります。

 そして、著作権問題というと、次の4つにざっくりと分類できます。

(1)人が自力で(AIの力を借りずに)作曲した場合
(2)人が自力で(ただしAIの力を借りて)作曲した場合
(3)AIが自力で(人の手を借りずに)作曲した場合
(4)AIが自力で(ただし人の手を借りて)作曲した場合

 この点については、まずは著作権法が「AIという機械が作曲をする」場合を想定していませんので判断が難しいところですが、内閣府知的財産戦略本部では一応、議論はされています。

 そして、(1)と(2)のケースでは著作権は「人の作曲者」に帰属し、(3)のケースでは著作権は発生しないという主張があるようです。

 それよりも、問題は(4)のケースです
 このケースは、私が知る限りではまだ議論の土俵にも上がっていないのですが、今後どのように法整備がなされるにせよ、混乱は必至だと個人的には思います。
(1)の人が作曲するケースですが、前ページで音楽の三要素はメロディー、コード、リズムだと述べましたが、一般概念で「作曲」というと、やはりメロディーを作ることだと個人的には思います。コードやリズムを考えるのは編曲に近いですね。

 しかし、その肝心のメロディーはAIに作曲させて、それに付随するコードとリズムしか携わっていないのに、「自分の作品」「著作権は自分に帰属する」と主張する人が現れるかもしれません。
 このケースは、私などは(2)ではなく(4)だと思うのですが、そうなると、著作権の問題がまったくわからなくなります。

 また、(3)のAIが自力で作曲するケースですが、もしかしたら、そのAIの開発者が著作権を主張するかもしれません。
 そして、仮にその主張が退けられたときに、開発者が「AIと人の共同作業です」とでも言い出したら、このケースも(4)になってしまいます。

 それ以外にも、作曲から演奏までAIがこなすとなると、当然ですが多くの音楽関係者が職を奪われることになります。

 いずれにしても、音楽や、絵、小説などは、「AIにはできないクリエイティブな仕事」と言われていますが、はたして本当にそうなのか、これを機に熟考するのもいいかもしれませんね。

 このAIは、「ディープラーニング」と呼ばれる仕組みで自己学習をする「子どものAI」と、人が一から教えて丸暗記させる「大人のAI」に分かれます。

 同じAIといえども、両者でどれほどの違いが出るのかは、第1回連載の中で「子どものAI」であるGoogle翻訳と、「大人のAI」である別の翻訳サービス(X翻訳)に同じ英文を日本語に翻訳させて、まったく異なる結果になるケースを紹介していますので、そちらを併せてお読みいただけたら幸いです。