実は電力小売り市場の6割は自由化されており、企業などの大口需要家であれば、新規参入者である新電力(特定規模電気事業者)から、あるいは他地域の電力会社から電力を買うことができる。しかし、全電力市場に占める新電力のシェアはわずか1.8%程度に過ぎない。「象とアリ」では競争にならないが、「象と象」では競争になるはずである。しかし、電力会社同士の独占地域をまたいだ競争は1件しか実績がない2。従って、自由化分野でも実質的に選択肢はないに等しい。3.11後に新電力には問い合わせが殺到したというが、東京電力管内では託送業務3が停止されたこともあり、大規模な乗り換えは起きなかった。

 そして1800万世帯を対象とした大規模な計画停電が起きた。これにより、現代日本社会でも停電が起きること、そうすれば経済社会が麻痺することを痛感させられた。

 なぜ計画停電が避けられなかったのか?直接的原因は地震・津波によって福島第1原発などが被災したためだ。しかしより本質的な原因は、福島第1・第2だけでなく、広野や鹿島といった大規模火力発電所が太平洋岸に集中立地していたことにある。原発に代表される大規模集中型電源は、どうしても過疎地に集中立地するため、その地域で大規模災害が起これば電源の多くが一度に被災し、致命的な供給力不足が引き起こされるリスクが高い。これも想定外だったのだろうか?

60年前から続く
地域独占のツケ

 計画停電のもう1つの原因は、他地域の供給力には余裕があったにもかかわらず、十分な量を東京電力管内に送電できなかったことにある。

 東西の周波数の問題もあり、地域間送電網の建設を怠ってきたツケが、このような形で現れた。電力に限らずネットワークインフラにおいては、その規模が大きければ大きいほど効果が高まる(ネットワーク外部性)。これは通信でも鉄道でも当たり前の話なのだが、電力では10の地域別に需給調整を行うことが60年前から大前提となり、地域間の電力融通は僅かしか行われてこなかった。これも地域独占の弊害であり、送電網の全体最適を考える主体がいないことが問題の根底にある。これまで電力会社は、「安定供給」を至上命題に掲げて電力自由化に反対してきたが、地域独占や発送電一貫こそが、安定供給を阻害したのではないか。

2:2012年3月6日に開催された総合資源エネルギー調査会電力システム改革専門委員会で、この地域間競争が生じない点が取り上げられ、オブザーバーとして出席していた電力会社に対して質問がなされたが、需要家が期待する価格が低すぎて応じられないとの回答だった。しかし、同委員会で配布された需要家アンケート調査によれば、そのような理由による他地域からの供給の断念は12%に過ぎず、3分の2以上が「地元の電力会社以外の電力会社が十分な情報を提供しなかった」との理由であった。
3:電力会社(一般電気事業者)が新電電に送電網を貸し出すこと。