イヌ型アイボに詰め込んだ 次世代AIロボットのノウハウ松井直哉・ソニー 事業開発プラットフォーム AIロボティクスビジネスグループ 商品企画部 統括部長 Photo by Reiji Murai

 むっくりと起き上がって大きく「伸び」。そして頭をブルブル。気だるそうな様子で目を覚ましたアイボは「ワン!」と親しげにほえた。まさに電源が入るというより、目覚めの瞬間だった。

「箱を開けた瞬間からストーリーは始まっているんです」と新型アイボ開発者の松井直哉は話す。正確には「箱」ではなく「コクーン」と呼ぶパッケージだが、幼虫やサナギを保護する繭(まゆ)をイメージした包みの中で眠るアイボが、ここから取り出されて目覚めるのだ。

 1999年に発売された先代の「AIBO(アイボ)」は累計で15万台以上を販売したが、ソニーの経営不振で非中核事業に位置付けられ、2006年に生産を中止した。ソニー凋落を象徴した製品となったが、それから12年たって、小文字の「aibo」ブランドで復活したのが新型アイボだ。

 この開発の初期段階から参加したのが松井だった。平井一夫会長が社長時代の16年初頭に設置した「中長期事業開発部門」のメンバーに選抜されたのが始まりだ。

 この新部門のヘッドは、知的財産担当の御供俊元執行役員。当初、平井から御供に指示されたのは「AI・ロボティクス分野での新事業の開発」だった。