ドル円相場は2、3月に76円台から一時84円台まで急伸した。直接の要因は堅調な米国景気とその金利上昇。背景には欧州発の世界危機リスクの後退があった。今年初め、市場は欧州危機を警戒する一方、リスク削減やヘッジなど危機対策をやり尽くした。ECB(欧州中央銀行)の3年物資金供給オペ(LTRO)発動で銀行破綻が回避され、そうしたヘッジなどの反対売買が起きた。リスク警戒ムードが緩和されると、円安に傾きやすい。
3月上旬、ロンドンで会った海外投資家は皆、円売り話ばかりを聞きたがった。そこから彼らがすでに円売りポジションを構築済みと拝察した。彼らは日本の経常赤字化とか日銀の一線を越えた金融緩和を、円安への触媒だと強調した。これに対し、経常赤字化懸念や日銀の政策からの円安を促す資金フローは現段階で生じてはいないと説明して不興を買った。では何が円安のドライバーかと問われ、あなた方自身の思惑からの取引だと答えてさらに不興を買った。
そして、最近の円安と株高の勢いを見て、相場が新局面に入ったと思わないのかと訝られた。しかし、米景気低迷と低金利環境で長らく円高地合いが続いた後に米金利がじわり上昇し、急激な円安と株高が相伴う展開は、この局面の典型的現象。上のグラフは、過去の米利上げ局面入り前後のドル円相場の推移をまとめたもの。左半分の利上げが近づく場面で、ドル円相場は平均的にはじわり上昇する程度だが、個々のチャートでは、短期的な上下動を繰り返している。