米国で売上高の65%を稼ぐシャイアーの買収により、武田は米国での事業基盤を手に入れることができる。臨床試験を行うための医療機関や患者との関係性、規制当局との交渉力などは一朝一夕に確立できるものではない。買収によって同社の海外売上比率は約80%に上昇する。それは、事業領域と地域展開の両面で、欧米の大手製薬企業と競争するスタートラインに立つことといえる。

 シャイアー買収から、同社の世界戦略を読み取ることができる。武田とすると、欧米大手と異なった分野で勝負する意図が見られる。例えば、新薬開発というと、まずがん治療薬が思い浮かぶ。確かに、がん治療新薬の価格は高騰している。当たれば大きい市場であることは間違いない。

 しかし、この分野では欧米企業の存在感が圧倒的だ。世界最大手ロシュの売上高(約6兆円)の60%ががん治療薬である。がん治療薬の分野で欧米勢に真っ向勝負を挑むのは現実的ではないだろう。

 一方、シャイアーは消化器、中枢神経の疾患や免疫分野に強みを持つ。武田は、中枢神経分野の売り上げを伸ばしたい。今回の買収には、強みを伸ばしつつ、手薄な分野を補完する意味がある。

 そう考えると、少し長い目で見ると、今回の買収がフリーキャッシュフローの増加につながり、株主価値の増大につながるという考えには相応の説得力がある。問題は、今後それをいかに実現するかだ。

 具体的には、米国を中心に免疫や神経関連事業の収益を増やす必要がある。同時に、買収した企業組織との融合を進め、研究開発体制も強化しなければならない。それが、財務内容の安定と、今後の買収戦略の実施に不可欠だ。

 同社の経営陣が思い描くような成果が実現できれば、恐らく、武田は世界市場の主要プレーヤーの一人として生き残ることができるだろう。今回のケースが成功例の一つとなることを期待したい。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)