天と地ほど差があるローソンの無人店舗

 一方、日本でAmazon Goが報道されたのと同じ日、ローソンは「ローソンパナソニック前店」でローソンとパナソニックが始めた無人レジ「レジロボ」の実証実験の様子を公開した。

「レジロボ」のポイントは電子タグを活用する点にある。最初の実証実験では、一つ一つの商品に付いているバーコードを、カゴに取り付けた読み取り機に来店客がかざす仕組みだったが、最終的な実験では、店内の延べ7万点の商品に貼り付けた縦2センチ・横7センチの薄い電子タグをレジロボ内で読み取り、素早く精算する。

 バーコードのように来店客が読み取る必要がない。機器の開発でパナソニックは工場の自動化技術を活用して、コンビニでの実際の運用に耐えうるものにアレンジした。まさにローソンとパナソニックのコラボレーションである。

 しかし、このローソン&パナソニックの取り組みとアマゾンでは、天と地ほどの違いがある。ローソンが人手不足解消と人件費削減を最大の目的とし、パナソニックは自社の工場自動化技術をこれに応用することでビジネス拡大を企図しているのに対し、あくまでアマゾンは買い物客の面倒を極力排することに注力している。

 ローソンの無人店舗は、バーコードであれ電子タグであれ、店員の代わりに来店客に何かしらの作業を強制する。

 一方で、アマゾンの無人店舗Amazon Goは買い物客の手を煩わせない。そして、それを可能とするのが、カメラとセンサーで買い物客を追跡し、手にした商品を把握する機会学習とディープラーニングによって強化された画像認識技術というわけだ。

 この画像認識技術は、元々はアマゾンの倉庫内の作業の省力化を目的として開発されたものだが、それを「買い物客の作業の省力化」のために店舗内に展開したのである。

インサイドアウトVSアウトサイドイン

 アマゾン、ローソン双方の報道がなされた際、多くの識者が人件費の削減による効率化を両社の取り組みの価値として挙げた。しかし、ことAmazon Goに限っては、それは本質ではない。

 日本企業の多くは今の事業の枠組みの中で効率性を上げるためにテクノロジーを導入することを考えた後に、顧客の利便性を図るための調整を行うという「自社事業の観点=インサイドアウト(Inside-Out)」の発想に終始しがちだ。

 しかし、アマゾンの強さは、それとは逆の「自社事業の外側の観点=アウトサイドイン(Outside-In)」にある。まずは顧客利便性が先にあり、それを実現するためにテクノロジーがあり、そして事業モデルがあるのだ。

 アマゾンの株価がほぼ一貫して、右肩上がりにあるのは、彼らが小売市場の覇者と目されているからではない。彼らはそんな狭いマーケットに閉ざされた企業ではなく、顧客利便性の改善の可能性のある市場であれば、すべてが彼らの市場に成り得るからだ。

 実はこの違い、アマゾンを始めとした現代のディスラプターと日本企業の違いとして、象徴的なものだ。

 日本企業の多くは、自らが属する業界や企業の都合に合わせて新たな技術を導入する。そのとき、しわ寄せを受けて手を煩わさなければならないのは顧客なのだが、企業としてはコスト削減ができれば良いのだから、目的は遂げられる。

 一方で、アマゾンは彼らのミッション・ステートメントのとおり「最も顧客を大切にする」ことを目的にしている。カメラとセンサーで会計という行為そのものをなくすというのは、アマゾンだからこその発想なのである。

 ローソンはあくまで店舗の「人手不足解消と人件費削減」というローソン自身の目的と、パナソニックの「自社の技術を売り込みたい」という目的が結びついたものに過ぎない。