ホールフーズ買収の戦略的な意味
Amazon Goから時を置かずに、アマゾンは高級スーパー、ホールフーズ・マーケットを137億ドル(約1兆5000億円)で買収すると発表した。
このニュースはリアル店舗とeコマースの融合という論調で報道されることが多かったが、アマゾンのホールフーズ買収の最大の目的は、消費者に最も近い場所に生鮮食料品の倉庫と宅配拠点を獲得することにある。
高所得者層に支持される高級スーパー「ホールフーズ」というブランドの魅力は確かにあるが、実はもっと戦略的な意味を持っている。
ホールフーズは、米国の買い物代行ベンチャー、インスタカートに出資しており、これを使った受け取りサービスを既に展開している。インスタカートは物流倉庫は持たず、店舗を倉庫のように使っている。消費者はインスタカートのアプリを使ってホールフーズなどの提携先スーパーの商品リストの中から買いたいものを選ぶ。
そして、インスタカートが仲介した買い物代行者が買い物を済ませ宅配するか、店舗内のロッカーに預けて後で消費者が受け取る仕組みとなっている。いわば、買い物代行に特化したシェアリングエコノミーと言える。
そして、買収によってアマゾンはこれを簡単に自社技術に置き換え加速することができるのである。アマゾンはあくまで「最も顧客を大切にする」ことだけを考えている。行うことのすべてはそれを第一の目的とし、もしそれを実現するには従来の小売販売モデルでは立ち行かないとあれば、新しいビジネスモデルを考える、というのがアマゾン流と言えよう。
だからこそアマゾンは「自社事業の観点=インサイドアウト」のアプローチでしか事業戦略を語れない企業には容赦ない。