運動は体を「強い細胞」の精鋭軍団にする

 BDNFと運動とのつながりは科学界でしばらく前から知られていたが、PGC-1アルファとBDNFのつながりは2013年になって初めて発見された。つまりPGC-1アルファが増えるとFNDC5の生成が高まり、これがさらにBDNFを増加させるのだ(*5)。

 新しいニューロンの誕生が新しいミトコンドリアの誕生につながるというのは筋が通った話だが、運動のように誰にとってもシンプルでしやすいことが、新しい脳細胞とそれを支えるのに必要なミトコンドリアの生成に役立つとは驚きである。

 ノースウェスタン大学の研究者たちは、運動と脳パフォーマンスのさらにもう一つ興味深いつながりを見つけた。その研究によれば、運動は神経発生の比率を低くする骨形成タンパク質の活動を低下させる。同時に運動は、骨形成タンパク質と反対に作用して神経発生率を高めるノギンの濃度を上昇させる(*6)。

 運動は体型を良くするのみならず、環境に適したミトコンドリアの生存を促しもする。それは運動がエムトア蛋白質を低下させるからで、そうして体は弱い細胞や、機能不全の細胞、突然変異した細胞を殺して消すか、もっと強くする。強者だけが生き残るのだ!

 ダメージを負ったミトコンドリアをなくして、かつて弱かったミトコンドリアの働きを良くすれば、エネルギーの生成は劇的に改善される。研究では、適性の高いミトコンドリアをもつことは、多くの神経変性疾患の発症の可能性を低くする効果があり、パーキンソン病の患者への神経保護効果も認められている(*7)。

 あなたは定期的な運動が血糖値を下げ、インスリン感受性を高めることをとうに知っておいでだろう。これは均整のとれた体を保つだけでなく、エネルギーレベルを安定させ、「快楽」神経伝達物質のエンドルフィンを増大させる。そうして、うつとの闘いを援護する。事実、定期的な運動はうつとの闘いにおいて少なくとも抗うつ薬と同じくらい強力であることが研究で判明した(*8)。さらに、運動は血行も改善し、炎症を低減して、脳をはじめ体組織全体に酸素を行きわたらせもする。これでミトコンドリアがより迅速にエネルギーを作れる。そして肝臓への血流も多くなって、神経毒を除去しやすくなる。

(本原稿は『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』よりの抜粋です。脳を鍛えるシンプルな運動法については同書をご参照ください)