シリコンバレーでIT企業家として長年活躍してきた著者が、ITの専門家としての技能を生かして、自らの体を「バイオハック」し、さらには23年の歴史を持つパロアルトのNPO、シリコンバレー保健研究所の所長(後には会長)として、さまざまな医学分野のエキスパートからの知識も総合し、現在の科学の最先端の脳の機能UP法を1冊にまとめた。タイトルは『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』。本稿では、同書から特別にそのハイライトを紹介したい。

「バイオハック」が脳を根本的に変える

 脳の健康に関するすばらしい本は何十冊とあって、僕の友人である医療の専門家がその多くを書いている。本書はそうした本の一冊ではない。

 そう、あなたは脳に病気がないことを望んでいる。誰だってそうだ。けれども、もっと多くを望むのなら? あなたの目標が健康な脳をもつだけでなく、いますぐ──そして長持ちする──自然が意図した以上によく働く、ハイパフォーマンスな脳をもつことなら?

 長年にわたり、僕はひそかに脳の考えられる限りあらゆる面をアップグレードするのに100万ドル以上を費やしてきた。そして数年前、「バイオハック」というコンセプトを発表した。自分の体に思いどおりのことをさせられるように、自分自身の生体系を数値化し、コントロールすることだ。

 そこで学んだことやバイオハック中に起こった変化は、僕の生活をあらゆる形で改善したが、最も重要なのは、脳を可能なかぎり活用して、家族との時間を楽しみ、よく働き、世界にプラスの影響を与えられるようになったことだ。もちろん、その改善は時間がたつほどに、いつまでもつづいてほしい。

 アルツハイマー病などの退行性の脳の病気が増加するなか、脳の健康については多くの議論がある。健康のエキスパートたちは、脳を健康に保つためによかれと、「クロスワードパズル」やら「社交ダンス」やらをすすめる。けっこうなことだ。

 しかし、このような議論には重要な要素が欠けている。脳は、実際に健康を損ねたり病気になったりするまで何十年も、可もなく不可もないパフォーマンスをつづけているということだ。

 説明させてほしい。何年も前に、僕が病院に行って、脳のパフォーマンスを高めたいと告げたとき、医師は、あなたの脳は完全に健康だと請け合い、僕の疲労や集中力の欠如をストレスのせいにして僕を追い払った。

 だが、たいしてよく働かないなら「健康な脳」って何なんだ? 設計された意図の半分しか走らないエンジンを積んだ車を運転したいなどと誰が思うだろうか?

 脳の健康に関する時代遅れの議論の多くは、「頭の良さは生まれ持った脳で決まる」という通念にもとづいている。シャープでスマートで、集中力があって、記憶力に恵まれていて新しい情報をあっさり覚えられる人もいれば──そうでない人もいるというわけだ。

 人が生きているあいだに、新しい細胞を育て、新しい神経系を結ぶ脳の能力──神経可塑性が発見されたのは20世紀も後半になってからだ。

 それ以前は、脳は老化して衰えるまで変わらないと信じられていた(今日でもまだ医学部でそう教わった開業医は存在する!)。

 このため、僕らが耳にする脳についての助言の大多数は「退化を避けること」に主眼を置いているのだ。