「明日やろう」「新年度から始めよう」「締切が近づいたら手をつけよう」……私たちが、普段の生活や仕事の中でついやってしまうのが「先延ばし」だ。この悪癖は、私たちの「成功」を阻む大きな要因のひとつでもある。そんな人生の大敵であり、私たちの自己実現を阻む「先延ばし」について語った不朽の成功バイブル『DOING IT NOW』がついに日本で邦訳される。今回は、その邦訳版である『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』から、「先延ばし」を打開するノウハウを紹介していく。

行動を起こさない限り、やる気は起きない

エドウィン・ブリス
アメリカの元経営コンサルタント。それ以前に新聞記者、編集者、上院議員秘書、ロビイストを経験。先延ばし癖と時間管理に関するセミナーを全米各地で開催して好評を博した。哲学、文学、歴史、心理学に造詣が深い。著書に『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』(ダイヤモンド社)などがある。現在、引退してカリフォルニア州で暮らす。

 やる気が出ずに先延ばしにしていることがあるなら、なんでもいいので、とにかくそれをやってみましょう。私はそれを「きっかけづくり」と呼んでいます。とにかく小さな一歩を踏み出してきっかけをつくり、さらに作業を続行するかを考えるのです。

 たとえば、手紙を書くのを先延ばしにしているなら、無理やり手紙を書こうとするのではなく、宛先を調べる、紙を準備する、伝えたい要点を紙に書く、といった小さな一歩を踏み出すのです。小さな一歩は、動作を伴う必要があります。これは心理的な壁を壊す効果があり、「止まっているものはずっと止まったままで、動いているものはずっと動いたままになる」という事実にもとづいています。ニュートンの法則は、物理学だけでなく人間の行動パターンにもあてはまるのです。

「5分間の実行」で自分の気持ちに火をつける

 たまった書類を処理する作業のように細分化できない課題の場合は、「5分間の実行」というテクニックを試してください。その課題をとりあえず5分間だけ実行するのです。それが終われば、ほかのことをしてもいいですし、さらに5分間延長してもいいでしょう。どんなに面倒な課題でも、5分間だけならすぐに実行できるはずです。

 タイマーを使ってもいいでしょう。タイマーを5分にセットし、タイマーが鳴るまでどれだけのことができるかを試してみてください。5分たったときに継続したくないと思ったら、もうしなくてもかまいません。そういうルールだからです。

 このやり方は、アルコール依存症者の回復施設で使われている方法と似ています。大半のアルコール依存症者は、二度とお酒を飲まないと誓うことに抵抗を感じます。達成できそうにない目標を課されると不安になるからです。そこで回復施設では、ほんのしばらくのあいだお酒を控えるように指示します。たった5分間なら、誰でも誘惑を抑えられるからです。それが終われば、さらに5分間延長します。すでに目標を達成して自信がついたので、今度はより簡単にできます。アルコール依存症者はそうやって徐々に時間を伸ばし、やがて1日、そして1週間という具合に断酒に成功するのです。

「5分間の実行」は、日常のさまざまな課題で大きな効果を発揮しますから、今すぐに試してみてください。先延ばしにしてきた課題を1つ選び、タイマーを5分にセットして、自分がその時間に何ができるかを見きわめましょう。まるで短距離選手のように5分間だけ全力疾走するのです。では、さっそくやってみましょう。

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 たった5分ですが、実際にやってみていかがでしたか? そんなに難しくなかったはずです。今、あなたはとても気分がいいのではないでしょうか。ずっと避けてきた面倒な課題に取り組んで爽快感にひたっているに違いありません。そして、作業を継続したいという衝動も感じていることでしょう。もしそうなら、その衝動に身を任せましょう。