「明日やろう」「新年度から始めよう」「締切が近づいたら手をつけよう」……私たちが、普段の生活や仕事の中でついやってしまうのが「先延ばし」だ。この悪癖は、私たちの「成功」を阻む大きな要因のひとつでもある。そんな人生の大敵であり、私たちの自己実現を阻む「先延ばし」について語った不朽の成功バイブル『DOING IT NOW』がついに日本で邦訳される。今回は、その邦訳版である『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』から、「先延ばし」を打開するノウハウを紹介していく。

「勇者」のセルフイメージで行動意欲をかき立てる

エドウィン・ブリス
アメリカの元経営コンサルタント
それ以前に新聞記者、編集者、上院議員秘書、ロビイストを経験。先延ばし癖と時間管理に関するセミナーを全米各地で開催して好評を博した。哲学、文学、歴史、心理学に造詣が深い。著書に『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』(ダイヤモンド社)などがある。現在、引退してカリフォルニア州で暮らす。

 先延ばしの原因の1つに、失敗などに対する「恐怖」あります。恐怖を克服できないときは「もし恐怖を感じていないなら、どのようにふるまうか?」と自問し、その答えをもとに行動すればいいでしょう。これは、17世紀に活躍したフランスの軍人、テュレンヌ大元帥にちなんで「テュレンヌ方式」と呼ばれるやり方です。

 三十年戦争のさなか、テュレンヌ大元帥はフランス軍を率いて自分たちより大きな軍勢に果敢に挑み、たびたび戦功をあげました。彼は勇気をたたえられたとき、「私はつねに勇者のようにふるまっているが、心の中ではいつも恐怖を感じている。しかし、恐怖に屈せず、『震えながらでも前進しろ』と自分の肉体に命じると、私の肉体は前進を開始する」と答えました。

 これが恐怖に対する究極の答えです。心の中で恐怖を感じていることを否定する必要はありません。それはけっして恥じるべきことではないからです。心の中で恐怖を感じていることを認めつつも、恐怖を感じていないかのようにふるまえばいいのです。このテクニックを使えば、自尊心が高まります。恐怖におののく臆病者の立場に甘んじるのではなく、恐怖に立ち向かう自信にあふれた勇者というセルフイメージが、行動する意欲をかき立ててくれるでしょう。

 また、この手法は、退屈、抑うつ、内気、疲労、忍耐力の欠如、単なる怠け癖のどれであれ役に立ちます。もし、これらを理由に行動を起こせないことがあるようであれば、自分がそれと反対の資質を持っているようにふるまうことをおすすめします。