アナウンサーやCAが実践している「声」のトレーニングとは? メディアトレーナーとして芸能界のトップアーティストを指導する中西健太郎さんいわく、相手が聞いて「気持ちのよい声」を出せるようになるには、ギターやピアノなど楽器をしばらく鳴らして安定させるのと同じで「エイジング」してあげることが大切だとか。今回は中西さんの新刊『姿勢も話し方もよくなる声のつくりかた』より、アナウンサーも実践している声のエイジングにもってこいのトレーニングと、そのコツや効果を紹介します。

 声は「楽器」と同じです。楽器というのは、通常はお金を払って買ってきますが、それを持ち帰って弾いてみても、最初からいい音が出るわけではありません。
「エイジング」といって、一定期間は音を出して楽器を慣らしてあげる必要があります。老化を食い止めようとする化粧品などでよく謳われる「アンチエイジング」とは逆で、こうして楽器に“前向きに歳を取らせること”をエイジングといいます。最近は、エイジングビーフなども流行っていますが、そのエイジングと意味合いは同じです。

 楽器によっても、必要とされるエイジング期間は異なります。
 たとえばギターやピアノなら数年、バイオリンはものによっては100年以上かかったりします。スピーカーでもプロは数週間から数ヵ月ほどエイジング作業をすることがあります。スピーカーの硬かったコーンが音に慣れてくるとなめらかになったり、ボディーが響きやすくなるのです。

ギターやピアノと同じように、人の「声」もエイジングで響きやすくなる

 人間の声も同じで、呼吸と姿勢が安定して声が出せる訓練をしないと、変なところに力が入ったりして声を出す状態になれず、いい音になっていきません。
 特に現代人は声を出す機会が減っていますから、意識して声を出す「練習」をする必要があります。そのために最適だと思っているのが、「外郎(ういろう)売り」の朗読トレーニングです。これは歌舞伎十八番という成田屋(市川團十郎家)に伝わる18の演目の中の一節です。アナウンサーや劇団員、時には航空会社のキャビンアテンダントなどの間でも、声や滑舌のトレーニング題材として活用されているものです。
 大きな声でゆったりと、深い抑揚をつけながら読んでみてください。外郎を売る商人の話ですから、物売りらしく、お客さまがふと関心をもってくれるように商品を上手に売り込む気持ちで、感情を込めて読むことがポイントです。

『外郎売り』冒頭の一節
拙者親方(せっしゃおやかた)と申(もう)すは、
お立合(たちあ)いの中(うち)に、
ご存知(ぞんじ)のお方(かた)もござりましょうが、
お江戸(えど)を発(た)って二十里上方(にじゅうりかみがた)、
相州小田原一色町(そうしゅうおだわらいっしきまち)をお過(す)ぎなされて、
青物町(あおものちょう)を登(のぼ)りへお出(いで)なさるれば、
欄干橋虎屋藤衛門只今(らんかんばしとらやとうえもんただいま)は剃髪致(ていはついた)して
円斉(えんさい)となのりまする。

 こちらでは、私の見本トレーニングもご覧になりますので、参考にしてみてください。

 こうして大きな声を出すこと自体が、感情を解放する練習にもなります
 声が小さいことを気にしている人に、いきなり「もっと大きな声を出して」「あなたの感情をストレートに表現して」なんて言っても、かなりハードルが高いかもしれません。でも、「姿勢に気を付けて、声を出す」ことなら、誰でもやれるのではないでしょうか。
 実際、大きな声を出し慣れてくると、不思議なもので感情を表に出しやすくなってきます。
 そのための練習も、人前で行うのが恥ずかしければもっとハードルを下げて、初めのうちはひとりになれる場所でやればいいのです。そうすることで徐々に慣れてきて、自然と大きな声を出すことも感情表現もラクになっていきます。

 練習を続けるコツは「今の自分にはできなくて当たり前」と思い、自分への期待値を最初に下げてから始めることです。
 「できる(はず)」と思うと、「なぜ自分はできないんだろう?」といつも考えてしまってストレスになります。「なぜダメなんだろう?」の答えは「~だから、ダメなんだよ」とつい考えてしまって、成長できません。
 一方、できないことが自然だと思えば、できたときにうれしいですよね。どうせ考えるのであれば「どうすればよくなるかな?」と考えるようにしてください。その答えは「~したらよくなるよ」と前向きになります。