声が小さい、通りづらい・・・と悩んでいる人はいませんか。普通に話しているつもりなのに、相手から「え?」と聞き返されると、話の腰を折りますし、自信なさそうに見えるのもイヤなものです。ですが、発する音源が小さくても声を遠くに飛ばせる方法があるそうです。メディアトレーナー、ボーカルディレクターとして、芸能界のトップアーティストを指導する「表現」のプロである中西健太郎さんの新刊『姿勢も話し方もよくなる声のつくりかた』より今回は小さな声でも遠くに届けることができるという理屈とコツをお伝えしていきます。

 声が小さい、通りづらい、という悩みを持つ人は、案外多いようです。たしかに、頻繁に相手から聞き返されたり、自信がなさそうに見えるとしたら、直したいですよね。実際、無理に喉をふりしぼって大きな声を出そうとしなくても、声を遠くに届けることはできるのです。今回はその理屈とコツをお伝えしていきます。

声が小さい、通りづらいという悩みをもつ人に朗報!

 まず、みなさんは、声がどのように出るかご存知でしょうか。

 やや小難しいと感じる人もいるかもしれませんが、声の出し方の基本となる「仕組み」の話なので、少しだけお付き合いください。

 まず、いろいろな弦楽器を想像してみましょう。
 バイオリンはバイオリンの音がするし、チェロはチェロの音、コントラバスはコントラバスの音、ギターはギターの音がします。
 どれも、音源となる弦がボディーに張ってある構造です。弦だけをはじいてみても、ビーンという音に、どれもさほどの差はありませんが、どの楽器もまったく違う音が鳴ります。

 なぜでしょうか。

 それは、ボディーが違うからです。大きさや、厚み、木の素材など楽器によってさまざまなボディーの違いがあります。時にはボディーが金属だったり、ガラスだったりすることもあります。このボディーの違いが音の個性を生んでいるのです。
 人間の声も同じです。音源である声帯の振動を、体の空洞に響かせることで鳴っています。そして、みんな違うボディーをもっています。骨格の大きさ、厚さ、筋肉質だったり、そうでなかったり、だから響き方も異なってきます。

 ここで注意しなければいけないのは、音源自体は小さな音しか鳴らない、ということです。

 人間の声帯も同じです。声帯は、左右1本ずつゴムひものように伸び縮みする振動体だと思ってもらえばわかりやすいでしょう。その間を空気が通り抜けることによってこすれ合い、音を発します。
 音源の振動は、ボディーに響かせることで大きい音や音色の変化が出せます。でも、大きな音を出そうとして無理に喉を鳴らそうとすると、声帯は緊張して硬くなり、振動を抑制して声が出づらくなります。とても小さな粘膜である声帯は、無理をするとすぐに声帯結節などの病気になったりもします。

 楽器の中でも声に一番近いのは、管楽器です。
 サックスを吹いたことがある方はおわかりと思いますが、音源であるリードという振動板(人間だと声帯)に圧を加えずに吹くとスーッというスカしっぺのような(スカしっぺもそういう原理です……)むなしい音が響き渡ります。ただ息を吹き込むだけでは、音は出ないのです。

 ほどよい圧を加えることでリードがこすれ合い、それがボディーやベル部分(人間でいうと胸や顔、頭の空洞)で共鳴し豊かな音を奏でます。人間の声もこれと同じ状態が起こっていると思ってよいでしょう。

 声帯は日常会話でも、男性で毎秒100回程度、女性で250回程度は振動しているといわれます。そして、歌を歌って高音を出しているときは、なんと毎秒1000回以上も振動しているそうです。

 つまり、声が小さい/通らないと悩んでいる人は、音源である声帯を力づくで鳴らして大きな声にしようとしてはダメなのです。声帯が痛んでしまいますし、無理やり力づくで怒鳴るように出された声なんて聞きたくないですよね。
 リラックスして息を吐くことによって音源である声帯が自然に鳴り、体の中の空洞に響かせることを意識すれば、気持ちよく響いた「また聞きたい!」と思うような通る声になるのです。
 胸腔や鼻腔、副鼻腔、口腔、頭蓋腔などを訓練によって響かせられるようになれば、どんな人でもラクにそんな声が出せるようになります。

 原理はわかったけれど、実際どうやって声を響かせればいいんだろう? と思われるかもしれません。ちょっと難しく感じられるでしょうか。でも、どなたでも簡単にアプローチできますから、ご安心ください。あらためて、やり方や練習法についてはしっかりご説明します。
 ひとまず押さえておいていただきたいのは、きちんと響かせることができれば、小さい声もしっかり相手に届くということ。無理やり声を張る必要などないのです。