社内外の会議やプレゼンなど、人前で話すことはもはやビジネスパーソンにとって日常業務のひとつといっても過言ではない。そんななか、昨今ビジネスパーソンの間で密かに話題となっているセミナーがある。「話し方」でも「見た目」を変える講座でもなく、「声」を変えることで第一印象をよくし、交渉を有利に進めたり、商品に興味を持ってもらおうというものだ。なぜ、今声に注目が集まっているのか。300人以上が集まったセミナー(主催:フジテレビ)に参加し、その人気の理由を探ってみた。

平日300人超の大盛況!なぜ今「声」が人気なのか?

 緊張すると早口になってしまう、声が小さい、滑舌が悪い、そもそも人前で話すのが苦手…、悩みの大小はあっても、「話し方」に少なからずコンプレックスを持っているビジネスパーソンは多い。

 その一方で、キャリアを積めば積むほどプレゼンや会議など人前で話す機会も増えていくのが現状だ。これまで、そんなビジネスパーソンの駆け込み寺といえば「話し方セミナー」というのが定番だった。しかし今、新しいトレンドとして、「声」を変えることでコンプレックスを解消しようというセミナーが人気を集めている。

 先日、『姿勢も話し方もよくなる声のつくりかた 自然とみんなを惹きつける43のレッスン』(ダイヤモンド社)著者であり、メディアトレーナーの中西健太郎氏が行ったセミナーも、平日の開催にもかかわらず300人以上のビジネスパーソンで会場が埋め尽くされた。

300人が詰めかけた会場

 主催のフジテレビによると「申し込み開始から4日で、早くも当初予定していた定員の200名を突破し、急きょ席を増やすことになった」というから、その人気の高さがうかがえる。

 中西氏は、「人の第一印象を決めるのは意外にも“声”が大きな要因を占めてる」という。たとえば、「あの人調子のいいこと言ってるけどなんとなく信用できないよね」「この人、なんとなく偉そうだなぁ」というのは、声が相手の無意識下に働きかけてその人の「信用できない」「偉そう」という感情を引き出しているのだとか。

「人間の無意識に働きかける情報のうち、95%は聴覚の情報を処理する小脳から得られるといわれています。音の情報がなによりも強く無意識に残るので、エンターテインメントではいかに人の無意識にアクセスするか、に重点を置きます」(中西氏)

 交渉ごとやプレゼンのみならず、普段の会話においても、まずは声によって相手の無意識下に働きかけ、相手の感情を引き出す。その感情が「信頼できる人」「面白い人」「楽しい人」「やさしい人」などと判断したときにはじめて、「この人から商品を買ってみようかな」「この人と仕事をしてみよう」などの「行動」が引き出せるのだ。だから最初にやるべきことは「この人の話を聞きたいな」という相手の感情のスイッチを入れることであり、そのために声は最大の武器になる、と中西氏。

中西氏から指導を受けたことがあるというフジテレビの佐々木恭子アナウンサー(中央)と榎並大二郎アナウンサー(右)

 当日の司会も務め、中西氏からの指導経験があるというフジテレビのアナウンサー佐々木恭子さんは、「先生から教えてもらったことで一番覚えているのが『いい声を目指さないでください。もう一度聞きたい声になってください』という言葉です。つい美しくてきれいな声をめざしたくなるんですが、もう一回聞きたい、もう一回会いたい声になってください、と言われたことが今でも印象に残っているいます」と話した。

あっという間に「自信」を手に入れる姿勢と声のつくりかた

 では実際、どうすれば「声」を変えることができるのか。

 セミナーでは、年齢も職種もバラバラの3人の男女が檀上に上がり、実際に中西氏から姿勢と声のレッスンを受ける。

自分の上に「天のカーテン」があると想像しながら。開ける動作を実際やることも、脳にインプットするうえで大切だそう。

 まずは姿勢。「足の親指を平行に並べ、地面にしっかり付けます。そして体の真ん中に突き刺している線(正中線)を意識しましょう。緊張すると目線が下に落ちてしまうので、なるべく高く保つようにしてください。また、相手に気持ちいいという感情を持ってもらうためには、自分がまず気持ちよくなることが大切です。天を見上げてそこに『天のカーテン』を想像し、そのカーテンを手で開けてみましょう。そこには青い空が広がり、光で自分がキラキラと照らされている姿をイメージしてください」(中西氏)

 モニターの3人がそれぞれ実際に姿勢を整え、両手でカーテンを開けるしぐさを見せる。背筋がピンと伸びていくのが一目瞭然だ。

 そして、いよいよ声のパート。「こういう大きな会場でも、会議室でもまず届けたい相手の1列後ろまで届けるつもりで話すことがポイントです。ただ大きすぎる声は人に不快感を与えるし、小さすぎると気が弱い印象を与えてしまう。相手の1列後ろに届ける気持ちで声を出すぐらいがちょうどいいのです」(中西氏)

レッスン後、笑顔に自信がみなぎる参加者3人を囲んで。

 短時間のレッスンでモニターの表情が変わり、声のトーンがかわり、声に「自信」が加わっていく。終了後には「最初は緊張で逃げ出したい気持ちだったけど、それがなくなった。これを機にもっと自分の意見を発言していきたい」「自分の中から伝えたいというエネルギーが出てきた。自分がかわったのがわかる」という感想が口々に発せられ、会場に集まった受講者たちもその変化に目を奪われているのがわかる。

 「姿勢」と「声」を変えるだけで、印象は簡単に変わる。実際、中西氏のセミナーを受けて「契約が取れた」「売上げが上がった」というビジネスパパーソン、経営者からの声は多いという。

 話し方よりも実は簡単で即効性のある「声」のトレーニング。一度習得すれば一生もののスキルとして使い続けられるというから、昨今のビジネススキルの中でも一番利回りのいい投資になるのかもしれない。