オーナー社長の良さ=コミットメント×任期の長さ
朝倉:ジャック・ウェルチくらい長い期間やらないと、刈り取りたいという誘惑に駆られて功を焦ることもあるでしょ。
村上:M&Aをやるときでも、リスクを取る期間と、回収する期間って、ものすごい長いじゃないですか。それが「俺は地ならしする期間」「俺はリスク取る期間」「俺は刈り取る期間」って役割分担で日本の社長が5年任期でやってると、もうその時点で上手く行かなさそうですよね。
朝倉:誰だって自分の期間に刈り取りたいでしょ。そりゃ、刈り取りたいでしょうよ。
小林:前任者が大きな自社株買いをしてしまって、後任者がEPSを上げる手段が絞られてしまってぼやいたりとか。「お前の時にやってまうと俺の時にやることないやんか!」って。
村上:難しいよね。社長任期とは別のサイクルで経営を管理する外部の目線が必要なんやろうね。
朝倉:無理やりシステマチックにやろうとすると、退職金を5年分割にして、その後5年間の業績に応じて払うとか?まぁ現実味ないな。
小林:インセンティブが歪んでるんですよ。だから遅効的な成果を、どう評価に反映させるかっていうのが、考えるべきテーマだと思います。
朝倉:よくオーナー社長が良いって言われることがあるけど、俗説的に語られる「オーナー社長の良さ」をもう少し因数分解すると、ひとつには任期の長さがあるでしょう。オーナー社長であろうとダメな人はダメなわけですからね。
オリックスのシニア・チェアマンの宮内さんとお話した際、「オーナー経営者がサラリーマン経営者よりも優秀だ、という説は嘘だと思いますよ」と仰っていたのは印象に残っています。宮内さんの場合は創業時のプロジェクトメンバーではあるけれども、創業社長ではない。けれども長期に渡って会社の舵を取るという意志があったという点においては、「オーナー社長」の要素は持ち合わせていらした。
村上:確かに、オーナー社長の良さを語る際、社内に対するパワーとか、社外に対する知名度とか、いろいろな要因は指摘されるけれども、ロングタームでインセンティブを感じてコミットしているという、ベースの部分の差が一番大きい可能性はあるよね。一般的な能力だけに関して言えば、社内の競争を勝ち抜いてきたサラリーマン社長のほうが高いだろうし。
朝倉:高いやろうね。
村上:でも、そっちの方がパフォーマンスが低いことが存在するというのは、能力の差でなくて、インセンティブの付け方の差にあるという可能性はあるね。