ウォルマートが取ったリスク
小林:いいリスクを取ったなと感じた最近の事例というと、ウォルマートやね。ウォルマートが、創業間もないJetを30億ドルで買ったこと。個別の案件で言うと高すぎそうな金額なんだけど、あれはウォルマートからすると、「死なない規模感」。放っておくと完全にAmazonに呑まれるだけなんで、「それはもう張るしかないやろう」と。結果としてうまくいっている。これは非常に良い事例だと思います。
村上:これもEコマース事業単体で利益を上げろとだけ言われると、めちゃめちゃ苦しいんですよ。でも、ウォルマート全体であれば取れるリスク。前にも話した「どのレベルで取ってるリスクなの?」っていうのを、ちゃんと社内でコントロールできてるケース。そうじゃないと絶対にできへんよね。「Eコマース対応しないといけないから、コマース新規事業部立ち上げて、EコマースでAmazonと楽天とヤフーに勝つ方法を考えてこい!」って言われて、「予算は?」「10億円!」ってなると「そりゃなんぼなんでも無理やで……」ってなるやん? ウォルマートのように会社の本業の競争力や成長性に直接関わる事業であれば、それに見合ったリスクの取り方をすべき。その意味ではウォルマートにとってM&Aはバランスシートの投資余力を活用していますから、有効な選択肢だったんだと思います。
*次回に続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年10月13日に掲載された内容です。
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。
村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。
小林 賢治 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。