徴収対象を拡大する理由としてよく言われるのは、楽曲使用料の徴収額が減少傾向にあり(CD市場縮小の影響)、その穴埋めとして「いままで徴収していないところでお金をとれそうなところ」をターゲットとしているのではないか、というもの。これを調べてみると、確かに2008年のリーマンショック後、2009年度からJASRACの徴収額は2011年まで3期連続で減少していた。それに呼応するかのように、2011年4月にフィットネスクラブに対して、レッスンに利用する楽曲の使用料の徴収を開始している。翌2012年4月からはカルチャーセンター、2015年4月にダンス教室、2016年4月にカラオケ教室や歌謡教室など、次々と徴収対象を広げている。

 この結果か、2012年度は前年を60億円ほど上回る増収を果たしている。過去10年ほど、JASRACの徴収額は1100億円前後でほぼ安定しているが、2009年度以降1100億円を割り込んだまま、減少傾向が続いたところに2012年度の回復だ。JASRACが公開している「事業報告」では、2012年に演奏会等(フィットネスクラブやカルチャーセンターの徴収額は「演奏」に含まれる)が約10億円の増収を果たした理由のひとつとされている。

 JASRACによれば、2012年度は、前年の東日本大震災によるコンサートの中止や自粛の反動で、社会全体がマクロ的に好況傾向にあった。2012年度は、CD業界も久しぶりの売上増を記録した年でもある。新規に徴収を始めたエリアの収入増はあったとしても、2012年度全体(60億円規模)の増収の一番の理由ではないとする。

徴収対象を広げていった本当の理由

 2011年の減収ピークと2012年の回復を見ると、JASRACが減収の穴埋めとして徴収範囲を拡大した、との見立ては成立する。

 しかし、その後ダンス教室やカラオケ教室などを徴収対象に加えているが、2017年度までの徴収額は一進一退を繰り返し、徴収対象拡大と徴収額の相関は微妙だ。当のJASRACは、演奏関係への徴収対象の拡大は、1996年のWTOで日本の著作権法の問題が指摘されたことから始まっているという。

 1970年に新法として大幅に改正された著作権法では、録音物の再生演奏のうち、音楽喫茶やダンス、それに伴う演劇などは著作権が制限される附則が設けられた。これが、飲食店での演奏は自由に行える文化、慣習を定着させた。が、WTOは、そのような権利制限は他国では存在せず、著作権に関する基本条約であるベルヌ条約では、この附則は認められないと指摘された。これを受け、JASRACは文化庁に附則廃止を要請。著作権審議会が答申をまとめ、1999年に著作権法からこの附則が正式に削除された。

 このような経緯もあって、JASRACは1996年から営利をともなう演奏行為について各所との調整、契約交渉をスタートさせている。