「小さな感動」が人を集める
ちょっと、ご自身の経験を振り返ってみてください。自分が行ったレストランを、つい人に話したくなるとき。観た映画を、誰かに教えたくなるとき。誰かから話を聞いて、すぐ別の人に話したくなるとき。人に何かを紹介したくなるのは、普段では感じられない「ちょっとした感動」があったときではないでしょうか?
冒頭で、私が取り上げた5つの事例も同じです。私自身が心を動かされたから、みなさんに「紹介」したのです。もし岡山の料亭でビールの受け皿に松の葉が入っていなかったら、「おいしかった」と思っただけで、人に紹介しようとは思わなかったかもしれません。治療院は、同じぎっくり腰の人には勧めたかもしれませんが、本に書くまではしなかったでしょう。靴を温めるという工夫や不思議な靴べらに感激したから、ご紹介したくなったのです。
人は、心を動かされると、人に紹介したり、リピートしたくなるものです。フェイスブックやツイッターなどのSNSに投稿して、みんなに何かを伝えたくなったり、誰かの投稿に「いいね!」を押したくなるのも、あなたの心がちょっとでも動いたときだと思います。その結果、ある商品が爆発的に売れたり、あるお店に行列ができたりすることは、みなさんもよくご存じでしょう。
すっかり定着した「インスタ映え」という言葉も、「ちょっと心が動かされた写真」と言い換えることができるのではないでしょうか。そして同じように心を動かされた人たちが、その情報を拡散し、どんどん世の中に広まり、多くの人たちがつながっていくのです。つまり、人が人に何かを伝えたくなる原動力は、感情的なものによるのです。
では、どうしたら、自分の仕事でお客さまの心を動かすことができるのでしょう?
変わったことをすればいいのでしょうか。ほかよりも目立てばいいのでしょうか。
いいえ、違います。それだけでは、人は感動してくれません。いっときは面白がって話題にしてくれても、「また行きたい!」とか「誰かに紹介したい!」とまでは思ってもらえません。お客さまの心を動かすものには、ちゃんと「法則」があるのです。その法則を理解すれば、実行することも、意外と難しいことではないのです。
拙著『だから、また行きたくなる。』の第2章からは、私が営業という仕事で意識してきたことと、私自身が心を動かされた多くの事例をご紹介しながら、人の心を少しだけ動かすための「2つの考え方」についてお伝えしていきます。
ひとつは、「レベル10」「レベル11」という考え方。
もうひとつは「先味・中味・後味」という考え方です。
どんな仕事であっても、この2つの掛け合わせを実践することで、お客さまに選ばれる存在になることができます。