あなたなら、どんなメールを送りますか?

× 短期的視点で対応する
「契約は契約、注文は注文」を盾に、相手に製品の買い取りを迫り、訴訟を起こすことも辞さない覚悟でキャンセルには応じないメッセージ。

We try not to refuse any requests from preferred customers, but we have no other alternative but to insist that you honor our contractual agreements. Your order has been processed and, regrettably, we cannot accept your cancellation request.

(重要取引先のご要望にはできる限りお応えしたいのですが、本件については弊社との契約上の合意を守っていただかざるを得ません。貴社のご注文に即して弊社は出荷手続きを済ませており、残念ながらキャンセルには応じかねます。)

○ 長期的視点で対応する
 訴訟は時間とコストの無駄。別の市場での販売も期待できます。優良顧客との関係を大切にするため、キャンセルに応じ、置かれた状況に寄り添うメッセージ。

We try our best to oblige our preferred customers and in the circumstances you explained, we will accept your cancellation request. We do hope your sales will improve soon and you will be able to take up the balance of your order at a later date.

(ご事情を勘案のうえ、重要取引先である貴社のご要望に最大限お応えすべく、本件キャンセルのご依頼をお受けいたします。貴社の販売が早急に回復し、今回のキャンセル分を後日再注文されることを心待ちにいたしております。)

「短期的視点」での対応は、自社の本年度の売上増には貢献するので、100%間違いとは言い切れません。

 しかし、相手企業の立場で考えてみましょう。市況悪化の影響で販売不振に見舞われている中で、発注品の一部キャンセルを拒否されているわけです。「今後は他の供給業者(仕入先)に切り替えよう」という感情がこみ上げてくるでしょう。もし、自社と競合する同業他社が「長期的視点」の対応をしたら、どうなるかは自明の理です。

プロの心を動かすものとは?

 ビジネスとは、「人と人の心が新しい価値や富を紡ぐ創作活動」です。長い取引関係の中では、お互いの立場が逆転することもあります。

 難局を乗り越え、ビジネスを継続していくには相互主義、つまり、「困ったときはお互いさま」という包容力に満ちた、ブレない信頼関係が何よりも大切です。

「この人は継続的な信頼関係を構築するに値する」。相手がそう判断できる手がかりを、メッセージの端々に添えることが大切なのです。それこそが、プロの心に響く「気くばり」のメッセージに他なりません。

 このように本連載では、「読み手の心をつかみ、信頼と尊敬をもって行動を起こしてもらう」英文メールの書き方を、読者のみなさんと考えたいと思います。