日本語でも悩むメールがスラスラ書ける! 総合商社で磨き抜かれた「生きた英語」とは?
「値下げ要求をスマートに断りたい」「代金の未払いをやんわりと伝えたい」「商品をさりげなく売り込みたい」。あなたならどう書きますか?
三井物産の商社マンとして、約40年間、第一線で活躍し、退職後は慶應義塾大学、早稲田大学のビジネススクールで教鞭をとる定森氏の新刊、『人を動かす英文ビジネスEメールの書き方ー信頼と尊敬を勝ちとる「プロの気くばり」』から、内容の一部を特別公開する

ネイティブにイエスと言わせる「商社の英語」<br />日本人の「気くばり」が、武器になる。

「人を動かす英文メール」とは?

 はじめまして。定森幸生と申します。

ネイティブにイエスと言わせる「商社の英語」<br />日本人の「気くばり」が、武器になる。定森幸生(さだもり・ゆきお)
1973年、慶應義塾大学経済学部卒業後、三井物産株式会社に入社。 化学品原料の貿易・国内販売を経験した後、1977年、カナダの McGill大学院修士課程修了(MBA取得)。米国三井物産New York 本店人事課での仕事を含め、通算約11年間、米国・カナダに滞在。 以降、一貫して三井物産のグローバル人材の採用、能力開発、 人事評価制度の設計・運用などに従事する。その傍ら、北米の政府機関、 有力大学(McGill, Cornell, UCLA, Texas A&M, Case Western Reserveなど)、 American Bar Association(アメリカ法曹協会)などの招聘による広範な テーマの講演、ワークショップ、諮問委員会などで活躍する。 日本では、東北大学、明治大学、法政大学、獨協大学、多摩大学、 全国外国語教育振興協会、国際ビジネスコミュニケーション協会 (IIBC) などで、学生および実務家に対して「考えるだけの英語から、 受け手に配慮しながら積極的に使うことで習得する英語」の実践例を説いている。 2012年に三井物産株式会社を退職。現在、慶應義塾大学ビジネス・スクール 非常勤講師、早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、明治学院大学 国際経営学科非常勤講師として、「Global Business Communication Strategy」 「Global Business Competency Development」 「Business Negotiations for Desirable Results」 「People Management Challenges in Cultural Diversity」などの講義を通じて、実務家対象の社会人教育に従事する。 その一方、企業のグローバル人材開発セミナー・ワークショップでも活躍中。 一般財団法人英語教育協議会の理事も務めている。

 本連載は、私が約40年にわたり、総合商社というグローバルビジネスの現場で、50ヵ国余りのビジネスパーソンとの仕事を通じて体得した「人を動かす英文ビジネスEメールの書き方」をまとめたものです。

 重視したテーマは3つあります。

(1)プロの心を動かすメッセージ

(2)プロに喜んでイエスと言わせる言葉の洗練度

(3)日本人が日常生活で大切にする“思いやりの精神”を、世界のプロに称賛される“気くばり”にパワーアップさせるノウハウ

 これから活躍される若い学生や社会人のみならず、すでにプロとして活躍しておられるベテランのみなさんと共有することが目的です。

 日本語でも英語でも、ビジネスコミュニケーションの目的は1つです。それは、「相手の心をつかみ、モチベーションを高め、自分の期待通りの行動を起こしてもらうこと」です。

 その決め手は、論理性でも合理性でもなく、信頼と尊敬にもとづく「気くばり」なのです。「アサーティブに」「ネイティブと対等に」などと、肩肘をはるだけが能ではありません。

「気くばり」というと、厳しい言葉を避け、優しく丁寧に接することのように思われがちです。

 しかし、ビジネスにおける本当の「気くばり」とは、そんな生易しいものではありません。

 簡単ですが、例を挙げます。

 自社製品の販売業者から、「市況悪化で在庫が思うようにさばけないので、契約済み製品の半分をキャンセルしたい」という依頼があったとします。

 その場合、大きく2つの選択肢が考えられます。