幼少期のブルー・オーシャン戦略ーー押し付けられたルールをそのまま受け入れない
ムーギー:私は自分の母親のミセス・パンプキンと共著で『一流の育て方―――ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』という本を出したんです。この本の中で、さまざまな分野で活躍している200人に、「子ども時代を振り返って、親に感謝していることは何か」と、自由記述形式で聞いたところ、一番多かった答えが、「物事を自分に決めさせてくれた」でした。アンケート結果を見て、幼少期から、主体的に行動していたことが、現在の活躍につながる要因の一つだと感じたんです。
お話を伺っていると、堀江さんも大学進学など、主体的に、戦略的に、自分の進む道を決められてきたんだなと感じます。幼少期のどのような環境が、今の堀江さんのパーソナリティーを形づくられたと思われますか。
堀江:うーん、何だろう。環境と言うよりも、ちゃんと考えていたことが、今の自分につながっていますかね。
ムーギー:押し付けられたことを鵜呑みにするのではなく、自分で考える習慣が子どもの時からあったと。
堀江:まあ、大人の言うことを鵜呑みにはしていませんでしたね。「大人が間違ったことを言っているな」って思っていた。ただ、そう思うことがあっても、理不尽に怒られたりしても、結構上手くやり過ごしながら、わが道を行っていましたね。
ムーギー:怒られたり、体罰をくらったりしながらも、わが道を行くと。
堀江:はい。僕は小さい頃、何回も家を追い出されていますからね。真夜中に家を追い出されて、鍵を全部閉められて…。
ムーギー:私との共通体験です。私もしょっちゅうやられました(笑)
堀江:追い出されるんですが、その前に2階の窓の鍵だけ開けておくんですよ。すると、夜中に両親が寝静まった後、はしごを使ってちゃっかり戻れちゃう。
あとは、裏口の鍵ももろくって、ドアをガチャガチャ揺らすと開いたんだよね。
ムーギー:伺っていると、こんな育てられ方をしたから、主体的あふれる方になったというものが、特にあるわけじゃないと。
堀江:うん。とにかく自分で考えていたんですよね。単純に人から言われたことでも、それをやることで、得になることだったら別にやる。けれども、そうでない場合は、「これ多分間違えているから駄目だ」とか、ちゃんと考えていましたね。
自分で考えるに関連して、ちょっとブルー・オーシャン戦略に関係するかもしれないんだけど。
ムーギー:何でしょう。
堀江:なぜかは分からないんですけど、子どもの頃から「市場を変える」っていう思考だったんですよ。きっかけは分からないんだけど、幼稚園くらいの頃から、そういう思考で物事を考えていた。
例えば、僕は勉強がめちゃくちゃできたわけですよ。国語算数社会みたいなのはいつも100点。5分でテストが終わるから、暇でしょうがない。だけど、残念ながらスポーツは普通だったんですよ。足が速くないから、腹立ってしょうがないわけですよ。
ムーギー:運動会なんかも悔しいわけですね。
堀江:うん。まあ、そうですね。だから、運動会はできるだけ運動能力の差が低い種目…
ムーギー:綱引きのような種目にばっかり出ると。
堀江:そうです、その手の種目に集中するとか。
ムーギー:私も玉入れと綱引きばっかりやっていました。
堀江:あとは、ドッチボールあるじゃないですか。あれは本当に腹が立つんですよ。
ムーギー:えっ、そんなに腹立ちますか?あっ、「何で俺にパスをくれないんだ!」みたいなストレスですか?
堀江:じゃなくて、もう要は活躍できないから。
ムーギー:なるほど。ドッチボールではヒーローになれなかったんですね。
堀江:プレーヤーとして活躍できない。だから、やりたくなかったんですよ。なので、これは駄目だと。ドッチボールなんか流行っている世の中を変えてやろうと。要は、ドッチボールよりも魅力的で面白い、知的なゲームを流行らせる戦略を取るわけです。
ムーギー:それはすごいですね。私、今からでも再開したいくらい、ドッチボール大好きだったというのもありますが、それは考えなかったです。つまり、今、みんなドッチボールをやっているけど、そもそもなぜ、これで遊ばなければいけないんだと。その前提がおかしいと。
堀江:そう。そういう話です。なので、知的なゲームを流行らせるんですよ。みんながそれにハマれば、自分の得意なフィールドで楽しめる。
ムーギー:なるほど。ブルー・オーシャン・シフトは、これまでの競争方法の前提を見直して、これまでの競争ルールに従った競争要素を思い切って提供せず、“本当に市場が求めている新たな価値”を提供することを重視しているんです。
ドッチボールという戦場で戦わず、より知的に面白くて小学生のお友達がやりたくなるという、新たな価値のあるゲームを小学校に提供するという意味で、小学生の頃から、ブルー・オーシャン戦略的な思考をお持ちだったと(笑)
堀江:まさに決められた土俵で戦わないってことは、ずっと考えてきたんですよ。人間ってフィクションを勝手につくって、そのフィクションの中、枠の中で生きているじゃないですか。
ムーギー:思い込みがずっと、伝承していきますからね。
堀江:『サピエンス全史』って本、読みました?
ムーギー:読みました、あれは本当にいい本でしたね。「集団的な思い込み」が社会を動かしてきたという。
堀江:あれは、僕が考えていたこと、言いたかったことと同じことを文章化してくれているから、よく話に出すんですけど。要は、今、全部当たり前と思っていることは、フィクションなんですよ。
ムーギー:私も衝撃を受けましたね。自分たちが信じてきたものが、全部思い込みとフィクションだということを、ズバッと言っている。
堀江:そう。結局、大学とか終身雇用とか就職活動とか、今の常識はフィクションでしかない。僕は、そういった当たり前をそのまま受け入れずに、全部その都度その都度、僕の考えで判断をして、自分なりのベストな、ベターな道を歩んできたつもりなんですよね。
ムーギー:堀江さんご自身もそうしてきたように、ゼロ高でも、世の中に対しても、そういった枠にとらわれず、自分の生き方を考えろと。行動しろと伝えたいわけですね。
堀江:うん。そして、今を生きろと。僕は『ゼロ』って本でもこのことは書いていますね。
未来のことも過去のことも忘れるぐらい今に集中して、今の時間を目いっぱい使う。
今に集中していれば、過去の失敗にとらわれたり、後悔することに時間を割かなくなる。そして、未来のことを考えると確実にリスクはあるんですよね。そのリスクを過大評価しないように、おびえないようにということを伝えたいですね。
(中編へ続く)