Aさんの懸念は、多くの経営者や管理職も同感だろう。褒められないと傷つきやすい若手を見ていると、これで厳しい時代を生き抜いていけるのだろうか、このまま褒めていれば本当に若手が育つのかと、不安がよぎる。Aさんは「褒めて育てる」ことが果たしていいことなのか、疑問をぶつけてきた。

Aさん「『褒めて育てる』方針になってからは、若手が傷ついたり、落ち込んだりして、揉めごとになるようなおかしなトラブルは確かに減ったんです。でも…」
筆者「でも……?」
Aさん「いつまで経っても従業員、特に若手たちのたくましさが感じられないんです。褒められると本当に自信になるんですか?」

 Aさんの疑問は非常に大事なポイントなので、以下で詳しく説明しよう。

 褒める効果については、心理学でも盛んに研究が行われている。そして、褒めることが実は逆効果になる場合もあることが指摘されているのだ。

 どういう時に逆効果になるのか。それは3つのパターンがある。以下、順に説明していこう。

1.やさしい課題ができて褒める時
実力を低く評価され、期待されていないという疑念が…

 人によっては意外に思われたかもしれない。でも、なぜ逆効果になるのか、ちょっと考えてほしい。

 難しい課題を上手く成し遂げた時、難局を何とか切り抜けた時に褒められれば自信になるし、モチベーションも高まる。

 ところが逆にやさしい課題をこなした時、あるいは誰でも簡単にできそうなことができた時に褒められると、自分の実力はよほど低く見られているのではないか、たいして期待されていないのではないかといった疑念が湧きやすいのである。

 実際、やさしい課題ができた時に褒められると、モチベーションが低下することが実験でも証明されている。

 これは常識的に考えればわかることだが、それがともすると見逃され、誰でも簡単にできることを褒めて、かえって自信をなくさせていることがあるのではないだろうか。

 何でも褒めればいいといった風潮が広まりつつあるが、それがますます自信のない若者を生み出しているのかもしれない。