大人向けなのに、子どもにも売れた
『ねこねこ日本史』

『東大教授がおしえる やばい日本史』は、子どもから大人に読者が広がった、一方、大人向けの漫画『ねこねこ日本史』は、その逆の広がり方をしたという。

「掛け算」の面白さで大ヒットとなったのが、編集を担当して2014年に1巻が発売された『ねこねこ日本史』(実業之日本社)です。これは、日本史の偉人たちが全員ねこだったら……という、ちょっと変わった設定の4コマ漫画。

 著者のそにしけんじ先生に漫画の構想を伺った際「日本史×ねこ」の掛け算が面白く、そにし先生の描くキャラクターも可愛くて、これはいける! と思いました。ねこ漫画好きは30~40代の女性が多い。歴史好きの女性のメイン層も同じ30~40代で、彼女たちは地方のゆるキャラ等の可愛いものが大好き。だから、掛け算の相性が抜群にいいのでは? と。

 『ねこねこ日本史』のコミックス1巻が発売されると、やはり想定していた歴史好き&ねこ好き女性が反応してくれました。
 ところが、ここで嬉しい誤算がありました。30~40代の女性読者が、自分の子どもと本を共有して、親子で楽しんでくれたんです。私が子どもの頃はそうでもなかったのですが、最近の流れとして「親子で本を共有して一緒に楽しむ」人が多いんですね。

なぜ『やばい日本史』は「児童書」なのに「大人」にも売れたのか?

 たとえば、足利尊氏をねこに例えたこの漫画。
 足利尊氏は味方を裏切ることが多く、何をしでかすか分からない人物なので、日本史の知識が多少ある大人は「そうそう、尊氏ってこういう所があるんだよね~!」と共感できます。
歴史を知らない子どもは単純に「変なキャラでおもしろい!」とか「ねこかわいい!」と楽しんでくれる。
 親子で着眼点が違っても、それぞれ自由に楽しめる。それが『ねこねこ日本史』の魅力です。

 漫画のヒットを受けて、数社からアニメ化のオファーが来たときも「親子で楽しめる」ことを一番に考えてくれた制作会社さんに決めました。2016年からNHK・Eテレでテレビアニメ放送がスタートし、これが決定打となって、爆発的に子どもにも人気が広がりました。

『ねこねこ日本史』は現在、シリーズ累計70万部の大ヒット。テレビアニメの人気も高く、子どもの歴史ファンを増やし続けている。「歴女ブーム」の次は「歴子ブーム」がくるかもしれない。