プレイングマネジャーの“落とし穴”

 ところが、プレイングマネジャーには、「心理的安全性」を壊してしまう傾向があるのが現実です。というのは、プレイングマネジャーは、とにかく忙しいからです。

「個人目標」と「チーム目標」を達成するプレッシャーを感じながら走り回らなければなりませんから、メンバーとじっくりコミュニケーションをとる余裕が、時間的にも精神的にもなくなりがちです。ついつい、メンバーの話にしっかり耳を傾けず、相手の気持ちも考えず、マネジャーの目線で一方的な指示を出してしまうのです。

 そして、思うように動いてくれないメンバーがいた場合、その「穴」を埋めるために「プレイヤーとしての仕事」に力を入れ出すと、さらに状況は悪化します。「なぜ、自分がこんなに頑張らなければならないのか……」といった被害者意識が生まれ、ついついメンバーに対して「責める」ような言葉が出てしまうのです。

 これでは、メンバーが「思ったことを口にする」ことなどできるはずがありません。「心理的安全性」は木っ端みじんに砕け散ってしまうのです。

 ですから、チームの生産性を高めたいと願うならば、メンバーの「心理的安全性」を何よりも大切にすることを強く意識しなければなりません。

 極論を言えば、目先の「目標達成」を多少犠牲にしてでも、「心理的安全性」を優先すべきとも言えます。

「心理的安全性が保証されている」とメンバーが感じ始めてくれれば、そこから「関係の質」は自然と高まっていきます。そして、はじめにでも触れたように、「関係の質」が高まれば「思考の質」が高まり、「思考の質」が高まれば「行動の質」が高まり、「行動の質」が高まれば「結果の質」も高まるグッドサイクルが始まります。

 目先の「結果」にとらわれるよりも、このグッドサイクルを回し始めることが重要なのです。たとえ、当初は目標達成ができなかったとしても、「心理的安全性」を優先することによってグッドサイクルが回り始めれば、あとから「結果」はいくらでもついてきます。当初払った犠牲も、すぐに取り戻せるはずです。長い目で見れば、「心理的安全性」を優先するほうが、よほど効率的なのです。