例えば、米メディアには“Trump presidency”(トランプ大統領の治世)という表現がよく出てくるほか、“this strange presidency”(この奇妙な大統領の治世)や、“Trump is a disgrace to the presidency”(トランプは米国の大統領制にとっての汚点だ)などという言い方さえされている。

 9月初め、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されて話題を呼んだ政府高官による匿名の投書「私も政権内でトランプに抵抗する一人だ」にも、“two-track presidency”という表現が出てきた。

 トランプ政権では、議会などに縛られる民主国家の首脳よりも即断即決で「取引」できる独裁者(強権的な指導者)を称賛する大統領の陰で、政府高官は、同盟関係や米国が伝統的に重視してきた理念を大事にし、政府内で手順を踏んで「まともな外交」をやろうと試みる二つの路線が並存しているという意味だ。

 この“presidency”を使った表現で一番有名なのは、“imperial presidency”という言葉かもしれない。日本語に訳せば「皇帝大統領制」か。

 つまり議会(立法権)や裁判所(司法権)と同列に三権分立の一角に過ぎない大統領(行政権)なのに、三権の上に君臨する皇帝のような存在になっているということなのだろう。

「皇帝大統領」の最初は
ニクソン元大統領

 この言葉がワシントンで定着するようになったのは、ケネディ大統領の側近として活躍したアーサー・シュレジンジャーが1973年に書いた同名の本からだと言われている。

 もともと歴史学者だった彼の日記をまとめた『JOURNALS』によると、最初は歴史学者として一般的な大統領制を集中的に研究するつもりだったようだ。

 だが次第に「ニクソン大統領時代の内部の状況を熟考するようになり」、権謀術数を好むニクソン大統領の横暴なやり方を帝政にたとえた比喩とともに、米国政治史の名著として残った。

 シュレジンジャー氏は2007年に89歳で亡くなるが、ニクソンに続き皇帝大統領制の呼び名を頂戴したのはブッシュ(息子)大統領だ。

 2005年にはボウドイン大学のアンドリュー・ルダルビジ教授が『The New Imperial Presidency(新皇帝大統領制)』という本で、「皇帝大統領制は戻ってきたのか」と問題を提起した。