超覺寺(広島) 投稿者:@chokakuji [8月21日]

辛さと幸せは紙一重!?

「辛いという字に一を加えると幸いになる」

 何やら暗号のような、最近はやりの「東大生が考えた脳トレ」のような……。ここのご住職の話によると、「辛さと幸せは紙一重」と表現したかったようです。

 「辛い出来事」が辛いままで終わらせるか、或いは「幸せな出来事」にするか。それは自分次第だということでしょう。

 村上春樹さんが『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋)の中で、マラソンのオリンピック銀メダリスト、ルーマニアのリディア・シモンさんの言葉を次のように紹介していました。

 「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」

 英文では、「Pain is inevitable. Suffering is optional.」です。

 肉体の痛みはどうしようもありませんが、それをただの苦しみとするか、そこから痛みを超えて何かを得るかは自分次第だというのです。

苦しみはオプショナル

 以前、よくフルマラソンを走っている同級生が「42.195kmという距離設定は非常によくできていて、どんな人間でも30~35km地点を過ぎると必ず自分の思い通りに走れなくなってくる」と言っていました。

 それを聞いて私はブッダの「一切皆苦(いっさいかいく)」、つまり、人生は思い通りにいかないという言葉を思い出しました。わたしたちは日々を過ごしていく中で、マラソンの35km過ぎのように、思い通りにならないトラブルや災難に必ず見舞われます。

 トラブルや災難は辛いものですが、そんなときだからこそ周りの人々のやさしさが身に沁みたり、当たり前と思っていたことが当たり前ではない有り難いことだったと気づかされたりと、学ぶことが数多くあります。

 トラブルに遭遇して、その辛さの中に閉じこもるか、トラブルを少し広い視野で見つめて学ぶべきことと受け止められるかは、まさに「オプショナル」、こちら次第です。そして学ぶべきことと受け止められれば、その後の人生が大きく変わっていくのです。

 トラブルが大きければ大きいほど、辛さに閉じこもる時間は長くなり、視野を広げるには多くの時間を要します。

 しかし、災難を単なる災難として終わらせず、そこから数多くのことを学ぶことによって、それが単なる「辛い」ではなく人生に新たな視点を与えてくれる「幸い」になってくるのです。

(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)