以上が特に注目される指標ですが、労働市場の実勢を正確に捉えるには、これらだけでは十分とは言えません。例えば、職探しを断念して労働市場から退出した人々は、統計上は失業者とならないため、失業率を実態以上に低く見せる可能性があります。こうした問題に対応するためには、労働参加率(16歳以上の生産年齢人口に占める労働力人口の割合)や、労働市場からの退場者も含めた広義失業率、経済的理由によるパートタイマー比率、失業者に占める自発的離職者の割合(自己都合による離職者が失業者に占める比率)、失業期間といった指標にも注目する必要があります。

 ただし、雇用関連の指標の数は多く、互いに異なる動きをすることもあります。そこで、労働市場の状態を総合的に捉えるために、雇用者数や失業率、賃金上昇率など17の指標(※)を構成要素とする労働市場情勢指数を構築しました。米国に12ある地区連邦準備銀行のひとつカンザスシティ地区連銀が公表している労働市場情勢指数と同様の指数です。

 当方で構築した労働市場情勢指数は、2009年10月の▲7.49を当面の底に上昇軌道を辿り、直近18年8月に3.28をつけました。住宅バブルに沸いた07年3月につけた高値2.70を上回り、ITバブル期の01年5月に記録した3.56以来の高い水準です。続く9月は3.08と小幅な低下となりましたが、高い水準を維持しました。労働需給はかなり逼迫してきていると考えられます。

(※)17の指標の内容は、失業率、フルタイム雇用を希望したにもかかわらずパートタイマーとなっている労働者等を含めた広義の失業率、失業保険申請件数、労働参加率、就業率、経済的理由によるパートタイマー比率、自発的離職者比率、長期失業率、失職確率、就職確率、雇用者数、人材派遣業雇用者数、労働時間、賃金上昇率、ISM製造業雇用指数、コンファレンスボード消費者信頼感指数の雇用現状DI、同雇用将来DIです)。

物価は安定、利上げは緩やかなペースで

 労働市場の状況から判断する限り、米連邦準備制度理事会(FRB)は、今後も利上げを継続する可能性が高そうです。利上げの着地点は、中立金利(景気を刺激も抑制もしない景気に中立な金利水準)と見なされる3%がひとつの目処になると考えられます。

 労働需給は引き締まってきていますが、幸いなことに現在のところ賃金、物価の加速度的な上昇にはつながっていません。FRBの金融政策に対する信頼感等から、インフレ期待が落ち着いていることが大きいと考えられます。いずれにしても、急いで金利を引き上げる必要はなく、FRBは中立金利の3%に向けて緩やかな利上げを継続する見通しです。

(三井住友アセットマネジメント 調査部 磯合隆)