さて、腰痛で整形外科を受診した際、心理社会的な要因について、医師から質問された人はどれくらいいるだろう。大概は、簡単な問診・触診、血液検査とレントゲン検査程度しかされないのではないだろうか。

 痛み治療の先進諸国と日本の違いは、あまりにも大きい。

 今年8月、北原医師が率いる横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニックは、「神奈川県における慢性痛対策としての啓発活動の実施」と題する事業を企画し、「神奈川県大学発・政策提案制度」に応募。採択され、パイロット的に横須賀・三浦2次医療圏(人口約70万人)を対象として、医療者/一般に対する慢性痛の啓発活動を行うことが決まった。

 今後は県の助成金を受け、医療者(医師だけでなく訪問看護師や薬剤師など多職種)、患者とその家族、一般市民に向けた、「慢性痛に関するリテラシーの向上」を目指し、

・医療者向け講演会
・NPO法人ワークショップ
・市民公開講座

 などを開催する予定だという。

 日本の慢性痛患者2000万人に、希望の光が差す日は近いかもしれない。

◎北原雅樹(きたはら・まさき)
横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニック診療教授。1987年、東京大学医学部卒業。医学博士。専門は難治性慢性疼痛。帝京大学医学部付属市原病院麻酔科、帝京大学医学部付属溝口病院麻酔科勤務後、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターに臨床留学。帰国後、筋肉内刺激法(IMS)を日本に紹介する。2006年より東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、2017年より横浜市立大学付属市民総合医療センターに移籍。IMS治療の第一人者としてテレビ、新聞、雑誌などでも幅広く活躍中。